2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13740350
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山根 基 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10323502)
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Keywords | 有機金属化学 / 遷移金属触媒 / 有機ケイ素化合物 / アシルクロム化合物 / アシル金属化合物 / 触媒的アシル化 |
Research Abstract |
典型金属アシル化合物の中で唯一安定に合成,単離できるアシルケイ素化合物は,合成反応におけるアシル化剤としての利用が期待されるが,そのカルボニル炭素-ケイ素結合が強く,炭素求電子試剤とは容易に反応しないため,カルボニル化合物の合成には用いられない。また,前周期遷移金属アシル化合物には安定に取り扱えるものも多いが,いまだその反応性に関する研究は発展途上であり,やはりアシル化剤として利用された例はほとんどない。一方,後周期遷移金属アシル化合物は,一般に配位不飽和な錯体が多く,アルキンやアルケンのような配位性の化合物に対する反応性が高いため,触媒的カルボニル化反応の鍵中間体として用いられる。そこで筆者は安定で取り扱いやすいアシルケイ素化合物やアシルクロム化合物を後周期遷移金属に対するアシル基供与体として利用できれば新規な触媒的アシル化反応を開発できると考え,研究を行った。 様々なアシルケイ素化合物に対し,種々の遷移金属化合物を作用させ,カルボニル炭素-ケイ素結合の切断とアルキン類のアシル化を検討した。その結果,分子内にアルキン部位を有するアシルケイ素化合物に,酢酸や酸無水物存在下触媒量のロジウム(I)カルボニル錯体を作用させることで,分子内アルキン部位がヒドロ-アシル化された環状化合物や,カルボ-アシル化された環状化合物が得られることを見出した。この反応では,アルキンロジウム(I)錯体とアシルシラン部位との間で金属交換が進行し,中間にアシルロジウム(I)錯体が生成しているものと考えられる。 またアシルクロム化合物がパラジウム触媒を用いるケトン類合成の良いアシル化剤として作用することを見出した。すなわち,触媒量の低原子価パラジウム錯体存在下,ノルボルネンやアレンなどのアルケンに対し,芳香族ヨウ化物とアシルクロマート錯体を作用させると,アルケンの触媒的アリール-アシル化が進行する。この反応では,アシルクロマート錯体とパラジウム(II)錯体との間の金属交換が鍵となっている。この反応を分子内反応に応用することでアシル基を有する様々な環状化合物が得られることが明らかとなった。 以上のようにアシルケイ素化合物やアシルクロム化合物と遷移金属触媒との間で金属交換が進行することを見出し,空気中安定に取り扱えるアシル金属化合物をアルキン類やアルケン類のアシル化剤として利用できることを示した。この手法により様々なカルボニル化合物を合成することができる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 山根 基: "Preparation of Furans by Palladium-Catalyzed Reaction of Acylchromates and Propargylic Tosylates"Heterocycles. 59・1. 333-345 (2003)
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[Publications] 山根 基: "Palladium-Catalyzed Aryl-Acylation of Alkene"Phosphorus, Sulfur, and Silicon. 177・8/9. 2105-2105 (2002)