2001 Fiscal Year Annual Research Report
開殻シリル置換ベンゼンアニオン類の合成と磁気的性質
Project/Area Number |
13740366
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
瀬高 渉 理化学研究所, 光反応研究チーム, 基礎科学特別研究員 (60321775)
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Keywords | 有機ケイ素化合物 / ベンゼンアニオンラジカル / 3重項状態 / ESRスペクトル / スタンニレン / ゲルミレン |
Research Abstract |
1.ベンゼンアニオンラジカルをスピロ炭素で連結した化合物のスピン間相互作用の解明 シリル基で安定化された2つのベンゼンアニオンラジカル間の空間相互作用を検討するため、テトラシラスピロビインダンの2電子還元を検討した。その結果、剛体溶媒中において3重項のESRシグナルの観測に成功した。つまり、この系において2つの開殻電子を空間経由で直交配置すると強磁性相互作用することを明らかにした。また、このジアニオンの固体物性を明らかにするために結晶化を検討しているが、現在のところ安定な結晶は得られていない。さらに、ベンゼンアニオンラジカル間をスピロ炭素でさらに連結した3量体および4量体についても、スピン間相互作用をESRスペクトルにより検討した。その結果、これらについてはそれぞれ4重項および5重項に相当するシグナルが観測された。すなわち、このようにベンゼンアニオンラジカル間をスピロ炭素で連結すれば開殻電子による磁性が失われない、つまり反磁性にならないことを明らかにした。 2.スタンニレンおよびゲルミレンの1重項-3重項エネルギー差に及ぼす置換基効果 スズやゲルマニウムは2価化学種であるスタンニレンおよびゲルミレンが比較的安定であるが、これらは基底1重項状態を示す。しかし、これらに置換基として陽性であるゲルミル基などを導入すると、1重項-3重項エネルギー差が減少し、分子設計によっては基底3重項状態を示すことが期待されている。新規な基底3重項分子の創製は、磁性材料の点からも興味深い。そこで、本研究では炭素よりも陽性な元素が置換した初めての安定な単量体スタンニレンおよびゲルミレンの合成単離を行った。その結果、各種分光学的測定により陽性元素の置換に伴う3重項状態の安定化を安定化合物として初めて明らかにした。
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Research Products
(1 results)