2002 Fiscal Year Annual Research Report
燐光を発する新規多核金属錯体を利用した高速パルス有機ELレーザーの開発
Project/Area Number |
13740378
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
大久保 貴志 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (90322677)
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Keywords | 有機EL素子 / 燐光 / 多核金属錯体 / Au2核錯体 / ブルームライン回路 |
Research Abstract |
有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料は次世代ディスプレイとして今その実用化に向けた研究開発が活発に行われている。本研究はこの有機ELを新しいレーザの開発に応用しようというものである。そのために、新しい多核金属錯体の合成とブルームライン回路を利用した新しいEL発光機構の応用という2つの観点からELレーザの作製を試みた。本研究において、いくつかの新規発光材料の合成を行った。これらは大きく分けると、Au多核錯体とチアゾール骨格を有する配位子を用いたAl及びZn錯体の2つに大別できる。Au2核錯体はAu-Auの特異な相互作用により非常に寿命の長い発光を示すことが知られている。この様な励起寿命の長い発光を示す材料をELデバイスとして応用することによりレーザ発振に必要な誘導放出を引き起こすことができると考えた。具体的には[Au(PR_3)(mbtz)]_2の組成を有する新規Au2核錯体を合成し、エックス線構造解析によりその結晶構造明らかにした。ここでRはphenyl基、thiophenyl基、furyl基であり、mbtzは2-mercapto-benzothiazoleである。それぞれの錯体はAu2核構造を有し、Au-Au間距離はファンデルワールス半径の和より小さくなっている。このことから明らかにAu-Au間に特異な相互作用が働いている事がわかる。これらの錯体は紫外光を照射することにより緑色から黄色の発光が確認された。[Au(PPh_3)(mbtz)]_2を真空蒸着により薄膜化し、XPSの測定を行ったところAu(PPh_3)(mbtz)の組成は保持している事が明らかとなった。この錯体をホール輸送層として用いることによりELデバイスを作製した。この素子に直流電圧を印加したところ10V付近で緑色の発光が確認されたが、発光が弱く寿命も短かったためスペクトル、および輝度の測定には至らなかった。一方、チアゾール骨格を有する配位子を用いても、いくつかの新規発光材料を合成した。これら錯体を用いてEL素子を作製し、ブルームライン回路を用いた高速パルス印加における発光を調べた。これら素子は70V印加時においてもショートは起こらず安定に動作した。この時の輝度はZn(II)二核錯体で11000cd/m^2であった。この二核錯体における発光輝度は青色発光で最も光る材料である上記のLiBq_4の値を上まわった。ただし、これらの素子においてもレーザ発振の兆候は確認できなかった。 本研究結果に関してはChem. Mater及びChem. Phys. Lett.に投稿中である。
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