2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13740402
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
唐澤 悟 九州大学, 薬学研究院, 助手 (80315100)
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Keywords | カルベン / 分子磁性 / 光応答性 / スピングラス / 単核単分子磁石 |
Research Abstract |
私は、「マトリックス中での光応答型分子強磁性体の構築」という研究課題で本年度研究を遂行した。本研究は、マトリックス(剛体溶媒)中でジアゾ化合物に光照射を行い、発生させたカルベン分子をスピン源として金属のスピンとの間に磁気的相互作用を生じさせる、いわゆるハイブリッドなスピン系で分子強磁性体を構築するのが最終的な目標である。現在、3個のジアゾ基と、ピリジル基を有する化合物1と銅の二価イオンとの混合溶媒の光照射後の磁化測定から、15ケルビン以下で磁化の履歴現象を確認し、更に交流磁化率の測定から周波数依存性が存在することを確認した。この実験事実は、カルベンを持つ分子で初めて確認された現象であり、詳細な磁気測定からマトリックス中で「スピングラス」が構築されていると考えた。またこの現象は、ナノサイズの閉環分子がもたらす挙動であることが予想される。今年度この現象を主題として、国内学会発表を10件、海外雑誌3報に掲載された。その中でも、J. Am. Chem. Socに掲載されたことは、我々の研究が広く世界に評価されたと考えている。上記の知見から、一般的に磁石となるために必要とされるメゾスコピックなスピン整列なく、マトリックス中で「磁石」類似の磁気的挙動を得ることが可能であることを示している。そこで、新たな分子設計としてカルベン分子と金属を使い「単分子磁石」を構築することを試みている。「単分子磁石」は、大きなスピン量子数とゼロ磁場分裂パラメーターを持つ分子であることが必要で、多くの例が発表されている。しかし、それらは全て多くの金属原子に基づく分子による磁気的現象である。そこで我々は特徴として、カルベンをスピン源とした光応答性であり、金属原子を1つしか使わない、「光応答型単核単分子磁石」を構築しようと試みた。現在、予備的実験であるが、ジアゾ基を5つ持ち、ピリジル基を1つ持つ化合物2とコバルトとの混合溶液中の光照射後の結果から、磁化の履歴現象を確認した。来年度、更に詳細に磁気挙動を調べ構造との相関を行って行く。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Satoru Karasawa, Hiroshi Morikawa, Fumika Imamura, Noboru Koga et al.: "2, 2'-Bipyridines carrying a diazo moiety and their complexes with bis(hexafluoroacethylacetone)copper : synthesis, structures, electronic and magnetic properties of their photoproducts in frozen solutions"Journal of Materials Chemistry. 11. 493-502 (2001)
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[Publications] Satoru Karasawa, Noboru Koga: "Photochemical formations of super high-spin molecules consisting of carbenes and metal ions in frozen solutions"Polyhedron. 20. 1387-1389 (2001)
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[Publications] Satoru Karasawa, Harumi Kumada, Noboru Koga, Hiizu Iwamura: "Magnetic Behaivoir of 3:2 Mixture of Bis(hexafluoroacethylacetoto)copper(II)and 1, 3, 5, -Benzenetriyltris(4-pyridyldiazomethane)in a Frozen Solution after Irradiation : Photochemical Formation of a Solid Solution Magnet"Journal of American Chemical Society. 39. 9685-9686 (2001)