2001 Fiscal Year Annual Research Report
金属錯体を含むフラーレン化合物の秩序構造と新規物性
Project/Area Number |
13740403
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
石井 知彦 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (90285718)
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Keywords | フラーレン / ポルフィリン / 共晶化合物 / X線結晶構造解析 / DV-Xα分子軌道計算 |
Research Abstract |
10年前の超伝導の発現により、一躍フィーバーを引き起こしたフラーレンの研究も、最近ようやく一段落し、これからのフラーレンの研究で求められるものは、単なる新形態炭素の発見や合成法・収集法の向上のみならず、これまでの研究を温故知新としてひとまず全体的に受け止め、全く違った観点からの応用に目を向けるべきであると考えられる。本研究では、フラーレンと磁性金属錯体から得られる電荷移動錯体をベースとして、新規にd-π相互作用を引き起こす系を構築するとともに、金属錯体の多様な設計性を生かし、一連のd-π相互作用物質群を多岐にわたって合成し、その物性をシリーズとして測定することを行った。フラーレンを様々な有機物、無機物、有機・無機複合電子系とともに電荷移動錯体を構築し、フラーレンのみ、あるいは金属内包フラーレンなどでは発現しなかった、全く新しい物性現象を発現する系の構築を目指した。 具体的には、磁性を有する金属ポルフィリンとC_<60>およびC_<70>とからなる共晶化合物を合成し、それら新規共晶化合物の詳細な結晶構造解析及び磁化率の測定を行った。特にCo(tbp)とC_<60>とからなる新規共晶化合物Co(tbp)C_<60>では、室温におけるX線構造解析を行うことに成功した。これは、フラーレン分子と共有結合を有さない共晶化合物のシリーズの中では、世界で初めての成功例である。これは、立体的にかさ高いtbpが、フラーレン分子を6方向から押さえ、加えて、Co(tbp)とC_<60>との間の極めて短い距離のために、C_<60>とCo(tbp)との間に大きな分子間相互作用が働き、室温においてもC_<60>の自由回転を完全に止めたものと思われる。 共晶化合物中のポルフィリンの電子状態については、相対論効果を取り入れたDV-Xα分子軌道計算を行うことで、解析を行った。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Ishii et al.: "Synthesis and Crystal Structure of Cocrystallite with Silver Octaethylporphyrin and C_<70>"Am. Inst. Phys., Conf. Proc., ed. by S. Saito et al.. 590. 409-412 (2001)
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[Publications] T.Ishii et al.: "Fullerene C_<60> Exhibiting a Strong Intermolecular Interaction in a Cocrystallite with C_4 Symmetrical Cobalt Tetrakis(di-tert-butylphenyl)porphyrin"J. Chem. Soc., Dalton Trans.. 20. 2975-2980 (2001)
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[Publications] T.Ishii et al.: "Intermolecular Interaction of Complexes with anti-formed metal octaethylporphyrins and C_<60>"Synth. Met.. 121. 1165-1166 (2001)
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[Publications] T.Ishii et al.: "Synthesis of Cocrystallite with Biferrocene and C_<60>"Trans. Mater. Res. Soc. Jpn.. 26(4). 1147-1150 (2001)
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[Publications] T.Ishii et al.: "Electronic Structure of the Haldane Gap System Derived Using DV-XαCalculations"Polyhedron. 20(11-14). 1297-1304 (2001)
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[Publications] T.Ishii et al.: "DV-Xα Calculation for the Syntheses and Electronic Structure of Macrocyclic Metal Complexes with Fullerene"Inorg. Chim. Acta. 317(1-2). 81-90 (2001)