2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13740481
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
広瀬 裕一 琉球大学, 理学部, 助教授 (30241772)
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Keywords | 被嚢細胞 / 強酸保持 / ATPase / 2,2'-bipyridine / phenoloxidase / 胎生 / 紫外線吸収 / MAAs |
Research Abstract |
ホヤ被嚢のもつ防御機能を細胞レベルで明らかにする事を目的に、被嚢細胞による強酸保持機構とその機能を研究した。さらに、被嚢によるUV吸収特性とallo-/xeno-拒絶反応におけるeffector機構について研究を行なった。 ・Phallusia nigra被嚢の生切片を脱共役剤として塩化アンモニウムを含む海水中に静置した場合、約1日の処理で強酸保持細胞の液胞中の酸が中和されたが、通常の海水に戻すと再び液胞内が酸性に戻った。これは生切片内の被嚢細胞が数日間は生存し機能を維持している事を示す。強酸の濃縮機構として、プロトンATPaseが機能していると考え、ATPase阻害剤バフィロマイシンを含む海水中で被嚢生切片を処理したが酸保持の阻害は認められなかった。ただし、阻害剤の被嚢切片内への浸透に問題がある可能性があるので、ATPaseの関与を否定できるものではない。 ・Phallusia nigraはバナジウムを特定の血球中に濃縮している事が知られている。2,2'-bipyridineを用いた組織化学により、3価バナジウムの被嚢内の分布を調べたところ、被嚢内血管中のバナドサイトを除きバナジウムを保持は認められなかった。これは、「被嚢中にバナジウムが含まれこれが付着防除に寄与している」とするStoecke(1980)の主張に対立する結果である。 ・被嚢組織における炎症反応のモデルとして、群体ホヤのアロ群体間拒絶反応系を用いて、主要なeffecteと考えられるphenoloxidase(PO)とこれが生成するキノンの働きを抗ホヤPO抗体を用いた免疫組織化学およびDOPA-MBTHによる組織化学により検討した。従来よりeffector cellと考えられてきたmorula cellがPOを保持している事が確認されたが、morula cellからのキノン放出に伴う炎症反応はPO阻害剤によっても抑えられない事から、morula cellはPOを持つだけで無く、POによって生成されたキノンを液胞内に保持していると考えられる。また、胎生種は卵胎生種と較べてPO活性が極めて低いことから、有性生殖様式とPO活性に関連がある事が示唆された。 ・被嚢による紫外線吸収と、強酸保持との関連を検討する目的で、被嚢が透明なホヤについて、被嚢の光吸収特性を比較し、温帯・熱帯/水深/強酸保持などに注目して検討した。共生藻を持つ強酸保持種でのみ、UVA-Bの波長帯で吸収が認められ、該当種からはmycosporine-like amino acids (MAAs)が単離されている。MAAsの保持は共生藻の有無と関連しているようだが、強酸保持細胞が紫外線を吸収する事が、紫外線光源による被嚢組織の観察からわかり、紫外線吸収機能に強酸保持細胞が関与する事が強く示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Euichi Hirose: "Colony specificity in the xenogeneic combinations among four Botrylloides species (Urochordata, Ascidiacea)"Zoological Science. 19. 747-753 (2002)
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[Publications] Maki Shirae: "Involvement of quinones and phenoloxidase in the allorejection reaction in a colonial ascidian, Botrylloides simodensis : Histochemical and immunohistochemical study"Marine Biology. 141. 659-665 (2002)