Research Abstract |
ゾウムシ類と植物との共進化を考えるため,まず,ゾウムシ類の系統関係を考察した. そこで,高等ゾウムシ類(広義のゾウムシ科)内の類縁関係について,比較形態学的研究によって得られた形態形質に基づく系統類縁関係の推定を行った. ○その結果,これまで高等と考えられていた,オサゾウムシ亜科,および,おそらくナガキクイムシ亜科は,高等ゾウムシ類内でもイネゾウムシ亜科などとともに初期に分化したグループであると考えられた. ○また,従来考えられていた,キクイムシ亜科とナガキクイムシ亜科およびキクイゾウムシ亜科の関係(キクイゾウムシ亜科+(キクイムシ亜科+ナガキクイムシ亜科))は指示されなかった.キクイゾウムシ亜科は,ゾウムシ亜科と区別する必要があるか今後検討を要する.キクイムシ亜科はゾウムシ亜科+キクイゾウムシ亜科と姉妹群になる可能性があることが示唆された. ◎高等ゾウムシ類の内,初期に分岐したグループとして,Brachycerinae,ハスオビコブゾウムシ亜科,オサゾウムシ亜科,イネゾウムシ亜科,ナガキクイムシ亜科が考えられる. ◎このうち,オサゾウムシ亜科,イネゾウムシ亜科,Brachycerinaeは,おもに,単子葉植物を利用しており,このことは高等ゾウムシ類が被子植物を利用して適応放散する際,はじめに単子葉植物を利用した可能性があり,大変興味深い. 〓今後は,これらの分類群の間の関係をさらに解明するため,分子データを用いて解析する必要がある. 〓また,ハスオビコブゾウムシ亜科については,はじめて幼虫が得られたので,形態学的研究を行い,解析データに加えて,再解析し,早急に系統的位置の確定を行う必要がある. ※なお,本研究の過程で得られた新たな分類学的知見として,Isopterina亜族の新設,クモゾウムシ族の2新属設立,無翅アナアキゾウムシ族やゾウムシ族Morimotozo属の分類と新種記載などがあり,学術論文として発表した.
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