Research Abstract |
本年度は,利得変調半導体レーザーを低コヒーレンス光源とする新規な干渉計を構成し,標準散乱体と見なした養殖真珠を測定試料として,真珠層の屈折率および膜厚測定を行った. まず,波長,発振出力,素子構造の異なる市販のファブリーペロー共振器型半導体レーザーを数種類購入し,利得変調特性を調べた.その結果,変調周波数1〜2ギガヘルツにおいて,数テラヘルツのスペクトル広がりが観測され,フリンジ干渉幅として約100ミクロンが得られた.この際,異なる素子間の差異はほとんど見られなかった.そこで,散乱光を除去するため,1.55ミクロン帯の光ファイバー出力半導体レーザーを光源に採用し,全光ファイバー化した低コヒーレンス干渉計を構成した.フリンジ波形を得るためには,参照光を掃引する必要があり,この機構を空間モードで構成することが一般的に行われている.しかし,光軸調整の猥雑さや掃引による雑音の発生を避けるために,本装置では,圧電セラミックスに光ファイバーを巻き付け,ここに交流電圧を印加して,光ファイバーの伸縮を引き起こすことにより,参照光に対する距離掃引を達成した.直径5cmの圧電体に長さ20mの光ファイバーを巻き付け,400Vの交流電圧を印加することにより,約1mmの遅延距離が得られた.この方法では,空間モードに光を取り出す必要がないので,参照側の光ファイバーの終端に金コートを施し,ここで参照光を全反射させることにより,光学調整を必要としない構成を実現した.さらに,試料側のアーム内にも圧電セラミックスを挿入し,参照アーム内のそれとプッシュプル動作させることによって遅延距離2mmを得た.こうして,構成した低コヒーレンス干渉計を用いて,真珠層に対する膜厚および屈折率を測定した.その結果,白,黒真珠など比較的大きい試料に対しても屈折率1.5〜1.7,層厚0.2〜2mmの範囲で測定可能であることを確認した.
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