2001 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学法を用いた二元系非晶質合金の力学特性評価と破壊機構の解明
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13750087
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中谷 敬子 大阪府立大学, 工学研究科, 助手 (60295714)
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Keywords | 分子動力学法 / アモルファス / Cu-Zr / ポテンシャル / 合金系 / 力学特性 / 変形 / 破壊 |
Research Abstract |
アモルファス合金は、低い剛性にも関わらず、静的強度、衝撃破壊強度、疲労強度、いずれも大きいというその特徴をもち、その製品の開発が進んでいる。申請者は、鉄単元系アモルファス金属の理想化されたモデルに対して、分子動力学シミュレーションを実施し、その変形挙動、破壊機構が、結晶とは全く異なっており、その違いは、原子レベルの構造とその変化の違いから生じていることを明らかにしてきた。しかしながら、現実に存在する複数種類の原子を含む合金系では、その原子構造が有しているオーダーリングの複雑さのために、単元系に対する知識がそのまま通用するかどうかはわかっていない。一方、アモルファス合金の解析については、銅ジルコニウム(Cu-Zr)合金について、二、三の原子レベルシミュレーションがなされているが、合金系の原子間ポテンシャルのパラメータに単元系の値を平均したものを用いているなどの点で暖昧さを有している。また、損傷/破壊に対するメカニズムはまだ十分に明らかにされていない。このような経緯から、本研究では、実験データが豊富な銅-ジルコニウム(Cu-Zr)合金系のアモルファス相に対して分子動力学法を用いてその構造および力学特性、変形・破壊挙動について検討を加えることを目的としている。 この目的達成のために、今年度は、Cu-Zr合金系を適切に表現できる原子間ポテンシャルの構築を行なった。具体的には、以下のような内容で、解析を行った。 (1)合金系を記述するにあたって、原子間ポテンシャルとして、Baskesにより提案された修正埋め込み原子法(Modified Embedded Atom Method ; MEAM)の枠組を用い、Cuに対するポテンシャルパラメーターについて、ほぼ満足のいくものを得、Zrについても、既に、申請者が提案しているものに比べ、より改良されたパラメータを提案した。この際、結晶構造の安定性、力学特性だけでなく、従来検討されている諸量に加えてフォノン分散曲線を良好に再現することも考慮した。 (2)提案したポテンシャルパラメーターを用いて、単元相、合金相の相変態に対するシミュレーションを実施し、その安定性を調べ、パラメーターの妥当性を調べた。 次年度は、Cu-Zr合金系の大規模アモルファス構造に対する変形シミュレーションを実施し、弾性特性の評価、結晶体との比較、引張変形下でのせん断帯の発生や応力ひずみ関係を基本とする非弾性挙動や、負荷除荷モデルによる損傷の蓄積、破壊のプロセスについて検討する。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 松本龍介, 北川 浩, 中谷敬子, 中谷彰宏: "アモルファス金属中を進展するき裂の分子動力学シミュレーション"日本機械学会論文集(A編). 67-653. 23-29 (2001)
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[Publications] R.Matsumoto, H.Kitagawa, K.Nakatani, A.Nakatani: "Atomistic Analysis of Crack Propagataion in Amorphous Metal"Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers. 67-653. 23-29 (2001)
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[Publications] R.Matsumoto, H.Kitagawa, K.Nakatani, A.Nakatani: "A New Algorithm for Large Scale Molecular Dynamics and Its Application to Deformation Analysis of Crack in Amorphous Metal"IMA4, Poster session. (2001)
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[Publications] R.Matsumoto, H.Kitagawa, K.Nakatani, A.Nakatani: "Large Scale MD study on Deformation Mechanism around Crack Tip in Amorphous Metal"Proceedings of INTERNATIONAL SYMPOSIA ON MATERIALS SCIENCE FOR 21ST CENTURY(JSMS-21). B. 277-280 (2001)
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[Publications] 松本龍介, 北川 浩, 中谷敬子, 中谷彰宏, 荻野 健: "分子動力学法によるアモルファスの強度特性評価(温度・ひずみ速度・密度依存性の検討)"日本機会学会講演論文集(平成13年度材料力学部門講演会講演論文集. 01-16. 405-406 (2001)