2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13750089
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山本 衛 近畿大学, 生物理工学部, 助手 (00309270)
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Keywords | 骨 / 繰り返し負荷 / 残存強度 / 原子間力顕微鏡 / 局所弾性率 |
Research Abstract |
繰り返し負荷が作用する期間中での骨強度の経時的変化は,疲労骨折の予測という観点からも重要であるにも関わらず明らかにされていない.そこで本研究では,家兎大腿骨皮質骨部からなる円筒状試料に,生体内で生じる程度の低いひずみ領域の負荷を生体外で繰り返し作用させ、骨の残存強度に及ぼす繰り返し負荷の影響を調べた.繰り返し数は,1×10^6と3×10^6回とし,ピーク圧縮応力5MPaの一定応力試験を行った.その後,繰り返し負荷を作用させた試料の残存強度を測定するために,圧縮破壊試験を行った.また,骨の微細構造の変化を調べるために,電子顕微鏡による観察を行うとともに,微小硬さを計測した.その結果,繰り返し負荷群の圧縮強度が有意に低下したのに対して,弾性係数には変化は生じておらず,繰り返し負荷は骨の破壊特性に大きな影響を及ぼすことが推察された.また,繰り返し負荷群の硬さ値が対照群よりも小さくなる傾向を示すとともに,微細構造の観察からは繰り返し負荷群の試料断面内に数多くの微小き裂が観察された.従って,繰り返し負荷が骨の微細構造に変化を引き起こし,負荷試験中の破断までは生じないものの,骨の残存強度を低下させることが示唆された.また,家兎の大腿骨,脛骨を用いて,原子間力顕微鏡の液中コンタクトモードで,ヘルツモデルを応用した局所弾性率の計測を行った.その結果,水平面での大腿骨(約15.3GPa)の局所弾性率は脛骨(約7.9GPa)よりも大きかった.さらに,大腿骨と脛骨ともに,水平面での局所弾性率が矢状面や前頭面よりも大きく,顕著な異方性がみられた.これらの結果から微小領域での力学的特性が生体組織が持つ合目的性によって,各組織や方向に依存して決定されている可能性が示唆され,今後繰り返し負荷を作用させた骨の局所弾性率を調べることで,骨疲労の機序に関する定量的な知見となり得ることが推察された.
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