2001 Fiscal Year Annual Research Report
摩耗面マルチスケール構造解析による人工関節の統一的生体内摩耗モデルの構築
Project/Area Number |
13750121
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
澤江 義則 九州大学, 工学研究院, 助教授 (10284530)
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Keywords | 人工関節 / 摩耗 / 超高分子量ポリエチレン / セラミックス / 耐食性金属 / 多方向滑り摩耗試験 / 摩耗面構造解析 |
Research Abstract |
本年度は多方向滑りピン・オン・プレート摩耗試験機を用いて,現在臨床において摩耗が大きな問題となっている超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)に関する摩耗試験を行った.一連の摩耗試験では,摩擦相手面材質および潤滑液組成がUHMWPE比摩耗量,およびUHMWPEの摩耗面形態に及ぼす影響について評価を行った.その結果,以下のような点が明らかとなった. 1.摩擦相手材としてアルミナセラミックスを用いた場合,人工関節用耐食性金属材料であるCoCr合金を相手材とした場合と比較し,UHMWPE摩耗量が1/2程度となった.このような摩擦相手材の違いによる比摩耗量の変化は,生体内から抜去されたポリエチレン部品に見られた傾向と定量的に一致しており,このことからこの多方向滑り摩耗試験の有効性が確認された. 2.摩擦相手材はUHMWPE摩耗面の微細な形態に対しても大きな影響をもつことが確認された.アルミナセラミックスを相手材とした場合,UHMWPE摩耗面には粒径数十〜数百nm程度の粒状構造が特徴的に観察されたのに対し,CoCr合金を相手材とした場合には,長さ数百nm程度の繊維状構造が多数観察された.このような摩耗面形態の相違は定性的に臨床結果と一致した. 3.摩耗試験に用いる潤滑液の組成も,UHMWPE比摩耗量および摩耗面形態の両者に大きな影響を及ぼした.生体内環境に近い希釈牛血清潤滑下では比摩耗量,摩耗面形態とも生体内から抜去されたポリエチレン部品に近くなるものの,タンパク質等の成分を含まないリン酸干渉生理食塩液中では,比摩耗量が有意に小さく,また摩耗面形態も大きく異なっていた.このようなことから,タンパク質等の生化学成分が生体内における摩耗機構に大きな役割を果たしていることが示唆された. また上記の摩耗試験と平行し,摘出人工膝関節について摩耗状態の詳細な観察を行い,その形態的特長と摩耗機構について検討を行った.
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Y.Sawae: "Role of Synovia in Wear Mechanism of UHMWPE"Tribology in Biomechanical Systems, Science and Applications. (in press). (2001)
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[Publications] Y.Sawae: "Wear Mechanism of Ultra-high Molecular Weight Polyethylene in Multidirectional Sliding Wear Test"Proc. International Tribology Conference Nagasaki, 2000. 1521-1526 (2001)
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[Publications] 澤江義則: "プラズマ浸炭チタン合金の人工関節摩擦面材料としての評価"日本臨床バイオメカニクス学会誌. Vol.22. 421-426 (2001)
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[Publications] 趙 昌煕: "摘出人工膝関節における摩耗の評価"日本臨床バイオメカニクス学会誌. Vol.22. 169-173 (2001)
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[Publications] Y.Sawae: "Quantitative Evaluation of Wear Property of Polyethylene-on-Ceramic Sliding Pairs for Joint Prostheses in Multidirectional Sliding Test"Bioceramics. VOL.14. 665-668 (2001)