Research Abstract |
乾燥熱風として過熱水蒸気を用いる過熱水蒸気乾燥の初期に見られるような,大気圧下での過熱水蒸気が常温付近の低温の物体と接触した際に凝縮し,その後,凝縮水が再び過熱水蒸気中に蒸発する一連の相変化現象とその応用について実験ならびに数値計算により解析を行った. 平成13年度は,まず,凝縮ならびに蒸発におよぼす混合空気の影響を調べるため,現有の矩形ダクト型の過熱水蒸気乾燥装置の蒸気供給部分の改良を行った.改良は,過熱水蒸気に若干の空気を混入させることが可能なように,蒸気供給部分の配管を改良し,空気供給用プロワとインバータ,モーターバルブならびに2段の加熱用ヒータを追加した.このことにより,主に湿球温度をモニタリングしながら任意の空気を過熱水蒸気に加えることが可能となった.次に,低温物体として約20℃の水槽に入った水を用い,その水位変化をコンピュータ制御された上下方向に0.01mmの制度で移動可能なステッピングモータに取り付けた電極(触針法)により水位の変化を連続的に測定することが可能な,水位測定装置の開発を行った.触針法で水位を測定する際,同時に気液界面の温度分布の測定を行うために,針の近傍に温度センサも取り付けた.最後に,これらの開発した装置を用いて,異なる湿度の中におかれた水表面の位置の変化を測定し,過熱水蒸気に加え,高温高湿度空気中での低温物体表面における蒸気の凝縮から蒸発への非定常相変化現象について,気流温度,湿度,露点温度,水面深さ,水の初期温度を変化させることにより,それぞれの影響について実験的に調べた.これらの実験結果をもとに,凝縮から蒸発への非定常相変化現象のモデル化を行い,また解析を行った結果,気流温度や湿度などの影響因子に加えて,放射伝熱の影響を予想以上に大きく受けていることを示唆する結果が得られた.そこで,放射伝熱量ならびに対流伝熱量の予備的な測定を熱流センサを用いて行った結果,これまでに,本実験装置では,対流伝熱と放射伝熱がほぼ1:1程度寄与していることがわかってきている.この結果は,実験結果の解析結果とほぼ一致するものであった. また,非定常相変化現象の応用として,過熱水蒸気中でジャガイモの調理実験を行った.その結果,高温空気中での処理結果と比較すると,ジャガイモの澱粉の糊化が促進されるとともに,表面の測色結果から,過熱水蒸気中のほうが高温空気中の場合と比べて色味が強くなることがわかった.これは,初期の凝縮現象により,十分な水分と熱量が与えられた後,凝縮水の蒸発により水分量が低下することが大きな要因であると考えられる.
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