Research Abstract |
本年度は,特に,化学プラントを意識して,入力飽和があり,出力の大きさに制限のあるような簡単なMixed Logical Dynamical(MLD)システム,特に制約条件付きの区分線形系として表すことが可能なシステムを対象に,ロバスト性を考慮したExplicitモデル予測制御法の開発を研究した.この方法は,大きさの制限のある外乱やノイズに対し,ロバストにモデル予測制御を達成する方法で,設計問題をMinimax最適化問題に定式化して解くものである.一般に,Minimax最適化型ロバストモデル予測制御では,制約条件との兼ね合いから保守性が大きくなるのが問題であるが,S-procedureを用いてMinimax最適化問題を線形行列不等式表現を用いた半正定値最適化問題に変換することで,保守性を従来の手法より大幅に低減化できる方法を考案した.この結果については,現在,国際会議ならびに学術雑誌に発表すべく準備中である.なお,一般的なMLDシステムにおいて常にこの手法が適用できるわけではなく,制約条件の形式によっては,非凸最適化問題になる場合もあるため,この点の理論解析や対応が課題である. また,半正定値最適化問題に定式化できず一般的な非凸最適化問題となる場合に対する最適化手法のために,これを効率良く解くためのツールの開発に関する研究も同時に行なった.Explicitモデル予測制御法では,オンラインで最適化を行う必要がないという利点をもつ反面,オフラインでの数値計算に関する問題が生じるが,これは,特にMLDシステムの制約条件や評価関数から,局所解から脱出し最適解に効率良く到達するメカニズムをもつ最適化ツールが有効であることがわかった.このため,ノイズ項をともなったホップフィールド型ニューラルネットワークをツールとして,以前から研究を進めている,1).確定的なものとしてカオス時系列から発生されるノイズを用いたものを用いた場合と,2).確率的なものとして,シミュレーティッドアニーリング(SA)によるノイズを用いたものを用いた場合の解探索能力の性能比較とExplicitモデル予測制御の設計問題に対する適正の検討を行った.この結果,1)のカオスノイズは,そこそこいい結果を示したが,2)のSAノイズはそのまま用いたのでは,かなり性能が悪く,1)とは比較にならないものであった.そこで,2)のSAノイズに対し,この原因を解析した結果,カオスノイズはシミュレーション時間内でノイズの振幅を0にすることなく,最後まで同じ振幅で周期的に働きつづけるのに対し,SAノイズでは,時間の経過とともに温度項に依存して,ノイズの振幅が徐々に減少し最終的に0に収束してしまう点にあるという結論となった.そこで,新たに,繰り返し数を自由に設定できる反復SAノイズを提案し,このノイズを用いたところ,カオスノイズとほぼ同程度の性能が得られることがわかった.この結果を本年5月に開かれる国際会議IASTED International Conference on Modelling and Simulationにて発表予定である.
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