2001 Fiscal Year Annual Research Report
細孔溶液中のイオン種の拡散とセメント水和物との相互作用に関する分子論的解明
Project/Area Number |
13750438
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
杉山 隆文 群馬大学, 工学部, 助教授 (70261865)
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Keywords | 電気化学ポテンシャル / Onsager現象係数 / 一般化されたFickの法則 / 相互拡散係数 / 多種類のイオン群を含む溶液 / 数値解析 / アルカリ金属イオンの溶出現象 / 塩化物イオンの移動 |
Research Abstract |
本研究の目的は,細孔溶液中のイオン種の拡散移動に起因して発生するコンクリート構造物の各種変状のメカニズムを,熱力学基礎に基づいた分子論的なアプローチから理論解明して,統一モデルの構築を試みることである。また,細孔溶液中のイオン種の速度過程の原則と相平衡の原則に基づいて,共存するイオン種の種類とその濃度およびセメント水和物の化学組成に支配されるイオンの拡散移動,物理・化学的吸着の関係を定式化することである。 本年度の研究では,荷電粒子を分子論的に扱うことにより,イオンの拡散移動と吸着現象を細孔溶液中の共存イオンやセメント水和物との相互作用を考慮しながら理論解明することを目的として行い,コンクリートの細孔溶液中を模擬した多種類のイオン群を含む溶液中の移動現象をモデル化して,各イオン種の時空間における濃度分布を数値解析によって計算できるまでに至った.モデル化は,イオンの拡散移動の駆動力を電気化学的ポテンシャルとして捉えて,単なる濃度拡散力に限らず電気力の影響も含めるために,Onsager現象係数および一般化されたFickの法則から各イオン種の拡散係数を計算した.つまり,コンクリート中のイオン移動現象の解明にあたって,多種類のイオン群を含む溶液中の各イオンの拡散係数を,相互拡散係数として計算する手法を見出した.また,コンクリートの細孔構造の物理的な特性を定量化するために実験的な検討も行った. モデル化の整合性を確認するために,ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの経時的な溶出量変化を実験と計算結果で比較して,モデルの精度を確かめた.また,コンクリート中の塩化物イオンの濃度分布を実験結果と比較することによって,塩化物イオンの移動現象と固定化現象に対する適応にあたっての,モデルの一般性を確認した.
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