Research Abstract |
本研究では,法面の樹林化に関する問題点と課題として3テーマ(1.樹木根系の強度試験,2.風荷重による木の揺れが周辺地盤に及ぼす影響,3.土との複合材料としての強度特性)を掲げ,工学的立場から主に実験を中心とした研究を行った.その研究成果を以下に述べる. 1.樹木の根系の強度試験 地盤の補強材料としての特性を調べるために,根の張り方と根鉢の形状により樹木を3グループに分類し,各3〜5種類の根系(合計22種類,最大直径8mm)の引張強度と水分量を測定した.引張強度は3N/mm^2〜150N/mm^2の範囲に広く分布し,全ての樹木において直径dが太いほど強度が低下する結果となった.太い根ほど水分量が多かったことから,根の引張強度は水分量に影響されるものと考えられる.また,引張強度には,根の張り方や根鉢形状による明確な違いが見られず,平均値として回帰式S=52.8d^<-0.8>(S:引張強度,d:根の直径)で表される.この結果から,樹木根系の引張強度は大局的には樹種によらないと判断した. 2.風荷重による木の揺れが周辺地盤に及ぼす影響 根鉢の大きさと深さ,土の種類ならびに風速をパラメータとした樹木模型の風洞実験ならびに静的引き倒し実験を行って,地盤の振動特性と風による引き倒し抵抗力について検討した.その結果,地盤振動には特に根鉢の深さが影響し,地盤の振動モードを変化させることがわかった. また,樹木模型の形状を種々変えた風洞実験と静的引き倒し抵抗力から風圧係数C_Dを計算し,樹形との相関性について調べたところ,CDは樹形の縦横比ならびに模型の固有振動数と高い相関性が認められた.更に実験を重ねる必要はあるが,現状ではほとんど実測不可能なCDを,簡易に推定できる可能性を明らかにした. 3.土との複合材料としての強度特性 根系のせん断抵抗力による地盤の補強効果を室内三軸圧縮試験により調べた.既往の研究では,根系量をパラメータとした現位置せん断試験あるいは室内せん断試験が行われ,根系によって土の粘着力cが増加する結果が多い中,せん断抵抗角φが増加するという報告もある.これらは,主に一面せん断試験から得られたもので,土試料は粘性土よりも砂質土が多い.粘性土の強度定数c,φは全応力と有効応力ならびに排水条件によって異なるので,練返した関東ロームに3種類の実根を設置した三軸UU&CU実験を行った.その結果,根の設置によってせん断強度は排水条件,樹種,根の直径に関係なく,最低でもローム単体の5%は増加する結果が得られた.
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