Research Abstract |
本研究は,木造建築物の耐震安全性を向上させることを目的に,建築物の強度・剛性を調整するため,設計の自由度が高く,かつ力学的に優れた抵抗要素としての木・鋼ハイブリッド耐力壁を開発することである。 耐力壁単体を木造骨組に組込んだ場合の耐力壁の構造性能を調べるため,木造骨組の載荷実験を行った。 試験体は木造骨組(幅1800mm,高さ2730mmと木造骨組に組み込んだスリット入り鋼板耐震補強要素で構成される。スリット入り鋼板のスリット間隔bを50mmした。これはレーザー加工による影響を受けないことを前提としたものである。建築構造用鋼板(幅1829mm,高さ914mm,厚さ1.2mm)を3枚木造軸組に取り付け,その接合にはZN65の釘を用いた。木造軸組には,柱(スギ材,JAS乙種1級,断面105X105mm,土台(スギ材,JAS乙種1級,断面105X105mm),梁(べいまつ,JAS甲種1級,断面180X105mm),間柱(スギ材,JAS乙種3級,断面45X105mm)を用いた。 鋼板の引張り試験,スギ材のほぞ接合部のせん断耐力試験を行い,材料の性質を調べた。また,厚さ1.2mmの鋼板を釘で木造軸組に接合した場合,鋼板は破れるかどうかについて,有限要素法解析によって検証した。降伏応力度が235Mpaの鋼材の場合,問題が無いことが分かった。 木・鋼ハイブリッド耐力壁の載荷実験では,木造骨組の下部が固定支持となる境界条件のもとで,梁端に正負交番の水平力を加えた。載加実験により,得られた結論は下記のとおりである。木・鋼ハイブリッド耐力壁試験体は大変形(部材角5%)まで,顕著な破壊無く,紡錘型な荷重-変形曲線を描いた。しかしながら,鋼板が薄い(建築構造用鋼板、厚さ1.2mm)ため,早期に面外弾性曲げ座屈が発生した。従って,全体的な耐力は大きく発揮出来なかった。そこで,今後の研究で、有効な面外補剛法を調べる必要が高まる。
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