2001 Fiscal Year Annual Research Report
入居者―職員の会話特性の分析に基づく高齢者施設のケアおよび居住環境評価
Project/Area Number |
13750579
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三浦 研 京都大学, 工学研究科, 助手 (70311743)
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Keywords | コミュニケーション / ユニットケア / ケア / 高齢者施設 |
Research Abstract |
これまでの高齢者施設のケアに関する研究の多くは、新しく導入した具体的なサービスの効果を検証する研究が中心であり、職員の入居者に対する「気配りによる声かけ」のように、心理的対応とも言える介助行為は、ケアの質を高める重要な部分でありながら、具体的な介助の形態をとらないため、これまでほとんど研究が蓄積されていない。あるいは、職員のパーソナリティの問題として片づけられた。このため、ケアの質や入居者の生活の質を測る方法の多くは、実態調査ではなく職員等へのアンケート調査に頼らざるを得なかった。そこで、今年度は、ユニットケアを取り入れた痴呆性高齢者専門の老人保健施設を対象として、入居者のADLや痴呆度が異なるユニットにおいて、入居者と職員の会話について、その記録方法と内容の分類方法を検討したうえで、入居者職員の会話特性の違いについて、一般会話、ケア会話、生活行為誘導会話の3種類に分類した上で、調査・分析を行った。 その結果、ADL,痴呆度ともに軽度の入居者については1)職員間に一般会話、ケアに関連する会話がともに多いが、既往研究(鈴木ほか、2001)で指摘されているような生活行為誘導会話は必ずし多くないこと、2)入居者同士の会話も活発であること、が示された。一方、痴呆度が高く、ADLの低い入居者については、3)職員との一般会話は少なく、ケアに関連する会話が相対的に多いこと、4)必ずしも行為誘導会話が多くないこと、5)入居者間の会話が少なくなった分を、職員とのコミュニケーションで補われる、という関係が示された。特に5)の結果は、痴呆度が高くADLの低くなれば、職員とのコミュニケーションの重要性が相対的に増すことを示している点で重要と考える。 また、1)4)の結果を既往研究と比較すると、痴呆性高齢者のケア方針により入居者-職員間のコミュニケーション内容が異なることが示唆される為、この点の研究が今後の課題とされる。 鈴木健二他、「痴呆性高齢者グループホームにおける入居者の生活の再編過程 痴呆性高齢者のケア環境のあり方に関する研究(1)」日本建築学会計画系論文集NO.546 P.121 2001年8月
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