2001 Fiscal Year Annual Research Report
中世の地方寺院における伽藍造営とその社会的背景に関する研究
Project/Area Number |
13750602
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
山之内 誠 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 講師 (40330493)
|
Keywords | 中世 / 寺院建築 / 明通寺 |
Research Abstract |
平成13年度は、主に中世寺院に関する資料収集と、現状調査を行った。まず中世以前から存在する畿内を除いた全国の寺院のうち、中世の遺構が現存する寺院を対象に文書の残存状況を調査して対象を絞り込む作業を行った。全国の寺院文書の影写本を、遺構が現存する寺院を中心に調べたところ、調査対象として有望なものには、福井県小浜市の明通寺(9世紀以降の文書が100点近く存在し、鎌倉時代の本堂及び三重塔が現存)、山梨県勝沼市の大善寺(12世紀末以降、文明年間以前の文書が74点存在。また鎌倉時代の本堂が現存)、広島県尾道市の浄土寺(10世紀に遡るものをはじめ、中世のものを中心に120点を超える文書が存在。また鎌倉時代の本堂及び多宝塔をはじめとする中世建築が現存)、などが浮かび上がった。このうち明通寺については、同じく小浜周辺に点在する多くの中世寺院(飯盛寺、神宮寺、妙楽寺、羽賀寺)にもそれぞれ20〜80通の中世以前の文書が存在し、かつ中世の遺構が現存することから、これら全体を総合的に分析することにより地域全体としての特徴がより鮮明に浮かび上がることが期待できる。このほか、中世以前の建築遺構が現存しない寺院の中にも、島根県平田市の鰐淵寺のように鎌倉初期から500通に及ぶ文書が存在する寺院も存在し、こちらも展開が期待できそうである。 また、並行して現存遺構の技法や様式上の特徴を修理工事報告書の調査や現存遺構の実検を通して行い、さらに建築そのものに限らず境内の様相の変化を伽藍図などと比較して考察する作業も、太宰府観世音寺・長野善光寺・小浜明通寺等で行った。しかし、こちらは今のところ有効な結果は得られていない。13年度は未だ資料収集の段階に留まり、詳細な分析に踏み込めていないが、14年度には明通寺を中心とする小浜の中世寺院と、鰐淵寺に対象をしぼって文書と遺構の両面から研究することを予定している。
|