2001 Fiscal Year Annual Research Report
中性子回析によるTi-2γ系水素吸蔵合金の水素原子位置の解明
Project/Area Number |
13750611
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 恵司 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (80324713)
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Keywords | 水素吸蔵合金 / メカニカルアロイング / 中性子回折 / アモルファス |
Research Abstract |
TiとZrは全率固溶体であり、かつ、Zr原子の中性子に対する干渉性核散乱振幅は正の値(b=0.7163×10^<-14>m)であるのに対し、Ti原子のそれは負の値(b=-0.3438×10^<-14>m)であるので、Ti_<0.6756>Zr_<0.3244>組成は平均の干渉性核散乱振幅が0となり、中性子零散乱合金が形成される。本研究では、Ti及びZrの零散乱合金組成粉末を重水素雰囲気中でミリングすることにより、アモルファス及び結晶(Ti_<0.6756>Zr_<0.3244>)D_X、を作製し、それらの原子構造ならびに水素原子の存在位置を中性子回折実験により調べた。 Ti(99.99%,#100)及びZr(98%,#100)を高純度Ar(5N)で数回置換し、1.3×10^<-2>Pa以下まで真空引きした後、遊星型ボールミルにより0.08MPa及び2MPaの重水素雰囲気中で720ksミリングし、アモルファス(Ti_<0.6756>Zr_0.3244>)D_<0.31>及び結晶(Ti_<0.6756>Zr_<0.3244>)D_<1.54>をそれぞれ作製した。中性子回折実験は高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所に設置されているHIT-II回折装置を用いて行われた。得られた散乱強度のデータを吸収や多重散乱等の補正及び規格化を行い構造因子S(Q)を得、そのS(Q)をフーリエ変換することにより実空間の情報である動径分布関数RDF(r)を求めた。 Zr原子の中性子に対する干渉性核散乱振幅は正の値であるのに対し、Ti原子のそれは負の値であるので、中性子回折で得られたRDF(r)のTi-Zr相関は負のピークとして観測される。アモルファスTi_<0.6756>Zr_<0.3244>D_<0.31>のRDF(r)にはTi-Zr相関に相当する負のピークが観測された。これはミリングによりTiとZrが原子レベルで混合していることを示している。また、S(Q)のピーク位置から、アモルファス相ではTi-Zr系の高温相であるBCC構造が残っていることがわかった。方、結晶Ti_<0.6756>Zr_<0.3244>D_<1.54>のRDF(r)には、Ti-Zr相関に相当する負のピークは観測されなかった。また、S(Q)のピーク位置がTi及びZrの水素化物のそれと一致することから、ミリングによりTiとZrの原子レベルの混合がおこなわれず、それぞれの水素化物が形成されたものと考えられる。
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