2001 Fiscal Year Annual Research Report
生体親和性を示す無機物質被膜の低温形成に関する研究
Project/Area Number |
13750623
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大場 陽子 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (50223938)
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Keywords | カルシウムアルミネート / 水和反応 / 疑似体液 |
Research Abstract |
3種類のカルシウムアルミネートC_12A_7(12CaO・7A1_2O_3),CA(CaO・A1_2O_3)およびCA_2(CaO・2A1_2O_3)を固相法により合成し,これらに水あるいはリン酸水溶液を加えてペースト状にし、その硬化性状を調査した。その結果,リン酸濃度が0.1Mを越えると、どのカルシウムアルミネートも硬化しなくなること,CA, CA_2は硬化に数時間を要するが, C_12A_7では10分以内に硬化することがわかった。 つぎに,3種類のカルシウムアルミネートの中でもっとも反応性が高く,リン酸添加によっても急硬性が保たれているC_12A_7の硬化体を37C゜の擬似体液(SBF)および同温度の水に浸漬した際に生じる溶液や固層(硬化体表面に析出する結晶)の変化について調べた。その結果,硬化体作製時のリン酸濃度が0Mおよび0.05Mの試料では、SBFに1週間浸漬後の試料表面に微細なリン酸塩の析出が認められた。浸漬液が水の場合や,硬化時に用いたリン酸水溶液の濃度が低い場合には、浸漬直後からpHが急激に上昇するのに対し,硬化体作製時に用いたリン酸濃度が高い場合にはpH上昇が遅延された。どの系についても浸漬溶液中のカルシウムイオン濃度がいったん上昇し,これが減少に転じる反応時間とアルミン酸イオン濃度とpHが上昇する反応時間とがほぼ一致していた。浸漬開始時に硬化体表面はカルシウムアルミネート水和物に覆われていることから,カルシウムアルミネート水和物の分解反応,アルミン酸イオンの生成反応,アパタイトやカルサイトの沈殿反応の平衡から考えて,硬化体作製に用いたリン酸濃度が低い試料では,硬化体表面の水和物の溶出によりカルシウムイオンやアルミン酸イオンがすみやかに放出され,SBFの緩衝作用が十分機能しなくなったのに対し,リン酸濃度が高い試料では水和物の溶出は抑制され,SBFの緩衝作用が持続したものと考えられる。
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