2001 Fiscal Year Annual Research Report
イオン伝導体における応力場誘起拡散と電場誘起拡散の違い〜イオンの拡散における電子と正孔の役割
Project/Area Number |
13750652
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
近藤 淳哉 岐阜大学, 工学部, 助手 (30301211)
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Keywords | イオン伝導 / 安定化ジルコニア / 誘電緩和 / 擬弾性緩和 / 単結晶 / 応力 / 異方性 / 時効 |
Research Abstract |
イオン伝導とは、異方性が高く、相互に関係のある力学的な歪みと電気的な歪み(分極)を併せ持つ結晶格子中を、電荷を持った点欠陥(酸素イオン空孔)が両場の相互作用を受け、構造緩和を行いながら拡散する複雑な輸送現象である。結晶格子中の歪みの元は母格子イオンとサイズの違うドーパントイオン及びドープの結果生じた酸素イオン空孔によるものであり、ドーパントイオンの挙動がイオン伝導に大きく影響を及ぼしている。しかし、従来は酸素イオン空孔の挙動についてばかり研究されてきた。本研究では、イットリア安定化ジルコニア単結晶に関して、応力場および電場の下でのカチオンの挙動に注目し、応力場と電場下で緩和機構の違いを調べ、イオン伝導機構を定量的に明らかにすることを目的としておこなった。 試料は、10mol%の Y_2O_3を安定化剤としてドープしたZrO_2の単結晶を用いた(応力軸および電場方向が、[100],[311],[211],[111],[110]の5種類)。試料はともに、時効により顕著に導電率が低下する温度である、1073 K で1000時間、大気中で時効をした試料と単結晶作成直後の試料との両方を用いた。交流インピーダンス法により、導電率と複素誘電率の電圧依存性を調べたところ、導電率は変化しなかったが、誘電損失は電圧が高くなると僅かに高くなった。これは、電場によって与えられるエネルギーの増加により、カチオンによる緩和現象が起こったことを示唆していると考えた。また、導電率は2階のテンソルであり単結晶は立方晶であるにもかかわらず、明らかな異方性を示し、母格子の対称性のみではイオン伝導の対称性を評価できないことを、あらためて実証した。これは酸素イオン空孔副格子が立方対称性ではないことに起因していると結論した。さらに、静的な格子歪み(弾性エネルギー)がイオン伝導に及ぼす影響を調べるために、圧縮軸応力を付加した状態で外部電場下におき導電率を測定した。その結果、導電率及びその活性化エネルギーは始め応力に比例して低下し、その後下に凸な2次関数に従い低下した。導電率の低下は、電場・応力場と電流の間の2次及び3次近似物質テンソルの効果が現れたものであり、圧縮に伴う酸素イオン空孔の移動の活性化エネルギーの上昇に起因していると結論した。
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