2001 Fiscal Year Annual Research Report
制御ミリングプロセスによる次世代水素貯蔵媒体としての新規な炭素系材料の設計指針
Project/Area Number |
13750657
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
折茂 慎一 広島大学, 総合科学部, 助手 (40284129)
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Keywords | 制御ミリングプロセス / 炭素系材料 / 欠陥構造 / 水素 / 水素貯蔵 / 刃状転位 / 水素貯蔵サイト / 化学吸着 |
Research Abstract |
本研究は、制御ミリングプロセスにより炭素系材料に対して高濃度の欠陥構造を導入し、水素を高効率で貯蔵・輸送するための新規な炭素系材料の設計指針を得ることを目的とする。 本年は、制御ミリングプロセスでの炭素系材料への欠陥構造の導入過程、そしてその欠陥構造に起因する新たな水素貯蔵機能との相関を詳細に評価することに成功した。 欠陥構造の導入過程: 5時間の制御ミリング処理を施した試料の高分解電子顕微鏡像には、視野内に多くの刃状転位が観察できた。投影像である電子顕微鏡像から判断すると、転位間の距離は5ナノメートル以下であった。さらに、同じ領域での電子エネルギー損失分光スペクトルからは、290eV付近のσ^*結合成分が端的にブロード化していることも見出せた。制御ミリング処理時間を変えた他の試料での高分解能電子顕微鏡観察および電子エネルギー損失分光測定の結果を含めて検討すると、ミリング処理時間が5時間程度から、グラファイト層間の刃状転位の発達やσ^*結合の減衰など、水素貯蔵機能を高める欠陥構造が顕著に発達し始めるといえる。 欠陥構造に起因する新たな水素貯蔵機能: 水素量は、制御ミリング処理時間の増加(すなわち欠陥構造の発達)に伴って著しく増加することがわかった。80時間後の水素量はCH_<0.95>にも達することがあらためて確認できた。各種の熱分析あるいは中性子散乱測定などの結果から、少なくとも2種類の水素貯蔵サイトがあることも解明できた。特に、刃状転位周辺の水素貯蔵サイトでの水素原子は「弱い化学吸着状態」にあるものと考えられ、今後はその物性の解明や水素貯蔵機能の観点からの詳細な評価が望まれる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] S.Orimo: "Hydrogen desorption property of the mechanically prepared nanostructured graphite"Journal of Applied Physics. 90. 1545-1549 (2001)
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[Publications] T.Fukunaga: "Location of deuterium atoms absorbed in nanocrystalline graphite prepared by mechanical alloying"Journal of Alloys and Compounds. 327. 224-229 (2001)
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[Publications] 折茂慎一: "水素貯蔵機能の観点からの炭素系材料の物性研究"炭素 (TANSO). 200. 261-268 (2001)
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[Publications] 藤井博信, 折茂慎一: "燃料電池自動車などへの利用が期待される炭素系水素貯蔵材料"高圧ガス. 第38巻第7号. 30-33 (2001)
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[Publications] 折茂慎一: "図解ナノテクノジーのすべて「ナノ組織水素吸蔵材料が未来のエネルギーを拓く」"工業調査会、川合知二監修. 287 (2001)