立方晶安定化ジルコニアの照射下構造安定性:選択的はじき出し損傷と蓄積電荷の効果

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13750658
• Research Category: Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
• Research Institution: Kyushu University
• Principal Investigator: 安田 和弘 九州大学, 工学研究院, 助手 (80253491)
• Keywords: 安定化ジルコニア / 照射損傷 / イオン、電子照射 / 電子顕微鏡 / 原子炉燃料 / 放射線廃棄物 / はじき出し損傷 / 電子励起

Research Abstract

立方晶安定化ジルコニアは次世代の軽水炉燃料(岩石型プルトニウム燃料)母相材料および放射性廃棄物の変換処理用材料として期待されている。本研究では、立方晶安定化ジルコニア(YSZ)中の照射欠陥集合体の形成・成長過程を調べ、この材料の照射下における微細構造の安定性を明らかにする。
100keV He^+、300keV O^+または4keVAr^+イオン照射した試料に電子顕微鏡内で集束した電子を照射すると、非常に強い歪みコントラストを有する欠陥集合体が形成される。一方、この欠陥集合体はイオンのみを照射したときには観察されない。これに対して、イオン照射を行わずに集束電子を照射しても同様の欠陥集合体の形成は認められるが、イオン照射後の試料と比較すると、欠陥集合体は明らかに形成され難い。成長した欠陥集合体は、臨界直径(約1.2mm)に到達すると転位を生成し、その後の電子照射に伴って転位線上で同様な欠陥集合体の核形成、成長、および転位の生成を繰り返す。この特異な成長過程は、欠陥集合体の形成機構を考察する上で重要と考えられる。また昭射下におけるYSZ中の新しい転位生成機構としても興味深い。従来の報告では、この欠陥集合体は(1)定比性を保った格子間型転位ループ、あるいは(2)YSZ中に不純物として含有される窒素の析出物(ZrN)であると考察されている。これに対して、我々はこの欠陥集合体は酸素イオンの集合体であると考察している。O^<2->イオンが板状に集合したと仮定して評価した欠陥集合体周辺の蓄積静電エネルギーは非常に大きく、観察した欠陥集合体のように大きな歪み場を誘起することが解った。YSZのように質量の大きく異なる構成元素からなる化合物においては、軽元素イオンのみが弾性衝突によって選択的にはじき出される可能性がある。また電子励起効果によって酸素イオンが選択的にはじき出される可能性も考えられる。いずれの機構が支配的であるかについては現時点では明らかでない。この点を次年度に追求する。

Research Products

• [Publications] K.Yasuda, C.Kinoshita: "Radiation-Induced Defects in Oxide Ceramics under Displacive and Ionizing Radiation"Proc. of 4^<th> Pacific Rim Int. Conf. on Advanced Materials and Processing. 1411-1415 (2001)
• [Publications] K.Yasuda, C.Kinoshita, S.Matsumura: "Effects of Simultaneous Displacive and Ionizing Radiation in Ionic and Covalent Crvstals"Defects and diffusion forum. (印刷中). (2002)
• [Publications] A.Ryazanov, C.Kinoshita, K.Yasuda: "Strain and Stress Field Contrast near Charged Dislocation Loops Formed under Irradiation in Ceramic Materials"Proc. of 4^<th> Pacific Rim Int. Conf. on Advanced Materials and Processing. 2929-2932 (2001)
• [Publications] J.H.Lee, S.K.Hwang, K.Yasuda, C.Kinoshita: "Effect of molybdenum on electron radiation damage of Zr-based alloys"J. Nucl. Mater.. 289. 334-337 (2001)
• [Publications] K.Yasuda, C.Kinoshita: "Electron-Beam Induced Dissociation of Dislocation Loops in Magnesia-Alumina Ceramics"Nucl. Instr. and Meth. B.. (印刷中). (2002)
• [Publications] K.Yasuda, C.Kinoshita: "Microstructure evolution in oxide ceramics under displacive and ionizing radiation"Proc. of 6^<th> Japan-China Symp. on Materials for Advanced Energy Systems and Fission & Fusion Engineering. (印刷中). (2002)
• [Publications] 安田和弘, 木下智見(分筆): "電子顕微鏡法の実践用解説とその応用写真集"日本鉄鋼協会・日本金属学会 共同出版編集委員会編(印刷中). (2002)