Research Abstract |
薄肉円管の液圧張出し加工に及ぼす周方向初期肉厚分布・材料特性値・加工条件(外力,変形量,摩擦など)の複合的影響について,実験とFEMシミュレーションとにより明らかにすることを目標に,本年度は,銅管,黄銅管,アルミニウム管を用いて研究を行った. 結果として,まず,本研究を通じて,円管の液圧自由張出し加工に適したFEMシミュレーション手法を明らかにすることができた.従来,管材に内圧を負荷する場合には,液圧の大きさを直接的に制御する手法が用いられてきた.しかし,本研究では,圧力媒体の管内部への流入量(または,管内部の内容積)を制御するような手法を用いることにより,従来手法では得ることが困難な最大内圧(内圧の極大値)を比較的簡単に求めることができるようになった.最大内圧は,管材の寸法及び材料特性値の影響を受けるため,実験とFEMシミュレーションとを比較する上で有用な指標であり,FEMシミュレーション結果の妥当性の検討する上でも有効であることが確認できた. また,初期偏肉を有する円管に内圧のみを負荷して自由張出し変形させた場合の変形挙動は,1.管両端部の軸方向変位の影響を受ける 2.張出し変形部長さの影響を受ける ことが分かった.初期偏肉を有する円管を変形させた場合,一般的に,変形が進むにしたがって偏肉が大きくなり,また,張出し量の周方向分布が不均一となり,管は回転対称形状には膨らまなくなる(偏心が生じる).そのような変形挙動は,管端部の軸方向変位を固定した場合に顕著となることが明らかとなり,管端部の軸押込みが管材の自由張出し変形の均一化に有効であろうことが分かった.また,張出し変形部長さに関しては,本研究の範囲内では,偏肉の進行よりも偏心の進行に影響を及ぼすことが分かり,同一の張出し量に対して,変形部が長い場合の方が偏心量は大きくなる傾向が現れた.
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