2001 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー代謝工学的発想による通性嫌気性細菌の水素生産高速化戦略
Project/Area Number |
13750738
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島田 豊 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助手 (10281164)
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Keywords | 水素 / 通性嫌気性細菌 / Enterobacter aerogenes / 乳酸 / 2, 3-ブタンジオール / 変異 / フォーゲス・プロスカウェル反応 |
Research Abstract |
Enterobacter aerogenesは嫌気条件下で糖より発酵産物として、水素、乳酸、2,3-ブタンジオール(BDL)、エタノールそして酢酸を生成する。水素は、ピルピン酸からアセチルCo-Aが生成するときに同時に生成される蟻酸を中間産物として生成するので、この経路を経由しない乳酸および2,3-ブタンジオールの生成は水素生産においてはマイナスである。そこで、乳酸およびブタンジオール生成欠損株の作製を試みた。まず、既にクローニング済のE. aerogenes乳酸脱水素酵素遺伝子(LDH)に適当な抗生物質耐性遺伝子を挿入したDNA断片をエレクトロポレーションにより細胞内に導入し、相同組換によりLDH遺伝子の破壊を行ったが,本年度は乳酸非生成株を得ることはできなかった。一方,遺伝子組換体の利用は商業利用において大きく制限されていることから,通常変異操作を用いてBDL非生成株の作出も行った。NTG変異操作を行った後,BDL生成の中間体であるアセトイン検出法であるフォーゲス・プロスカウェル(VP)反応をスクリーニングの手段として用い,VP反応陰性の変異株を2株(以下VP1,VP2株)得た。両株ともグルコースを炭素源とした回分培養でBDLはほとんど生成されなかったが,その他の代謝産物バランスは大きく異なっていた。VP1株は比増殖速度が野生株の半分と低くなっていたが,酢酸収率が増加,乳酸収率が減少し,エタノール収率は野生株と変わらず,その結果,水素収率が最大で2.0mol/mol-glucoseとなり本研究課題の第一目標を達成する株であった。一方,VP2株は乳酸収率が顕著に増加し、水素収率は野生株と同程度であった。今後は,野生株と両変異株の間の代謝,遺伝子変異を比較検討することにより,水素生産に寄与する因子を同定することにより,さらに効率的な水素高生産株の作出が可能と考えられる。
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