2002 Fiscal Year Annual Research Report
Z-ジエンを基質に用いる分子内ディールスーアルダー反応と天然物合成への応用
Project/Area Number |
13750803
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
芫尾 賢一 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (70287481)
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Keywords | 分子内ディールス-アルダー反応 / マクアリミシン / 天然物合成 / Z-ジエン / 立体選択的 / テトラヒドロインダン環 |
Research Abstract |
本申請者は、その反応性の低さから合成戦略に積極的に取り入れられることの少なかった(Z)-ジェンの潜在能力を有効利用し、高立体選択的な分子内ディールス-アルダー反応の達成を目的として研究を行った。標的化合物として、中性スフィンゴミエリナーゼを特異的に阻害するという興味深い報告が最近なされたマクアリミシンAを選んだ。立体化学を考慮してマクアリミシンAの逆合成解析を行うと、(E, E, Z)-トリエン誘導体からのエキソ環化付加、または(E, Z, E)-トリエン誘導体からのエンド環化付加の2つのルートが侯補に挙げられる。しかしながら、基質として前者を用いた場合には、立体化学の制御が困難であると思われた。一方、後者の環化付加反応においては、立体的な制約によりシス縮環のエンド型遷移状態しかとり得ない。しかも、アリル位の置換基の立体配置が大きく反応のπ-面選択性に関与することが期待される。したがって、立体選択的に分子内ディールス-アルダー反応を行うためには、アリル位に適切な立体化学を有する(E, Z, E)-トリエン誘導体が基質として適当であると考えた。まず、そのような(Z)-ジエンを有するモデル化合物を合成し、それを基質に用いて環化付加反応の検討を行った。その結果、マクアリミシンAのテトラヒドロインダン環部と同一の立体化学を有する環化付加体が単一の異性体として得られた。さらに、マクアリミシンAが有するD環を組み込んだ基質を合成し、同様にして分子内ディールス-アルダー反応を行ったところ、期待した通り、きわめて高い立体選択性を実現することができた。得られた環化付加体は、マクアリミシンAのすべての不斉中心を正しい立体化学にて有しており、全合成を行うにあたり重要な中間体となり得る。このように本研究によって、(Z)-ジエンを用いた分子内ディールス-アルダー反応の有用性を見出すことができた。
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Research Products
(1 results)