2001 Fiscal Year Annual Research Report
形質転換技術を利用したイネの穂培養法の確立と登熟過程解析への応用
Project/Area Number |
13760012
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田中 朋之 (勝部 朋之) 鳥取大学, 農学部, 助手 (50224473)
|
Keywords | イネ / 穂培養 / 登熟 / 形質転換 |
Research Abstract |
1、イネ子実の収量と品質に直接影響を及ぼす登熟過程を単純化して解析するために、穂培養法の確立とその応用を目指した。 2、本年度は、長期間の穂培養を可能とするために、(1)抗生物質(ハイグロマイシン、以下Hyg)を添加した培地とHyg耐性遺伝子を導入した形質転換イネを用いることで、微生物によるコンタミネーションの防止を図ること、(2)培地の糖・窒素の組成が子実中の炭水化物とタンパク質の蓄積量に及ぼす影響を調べることで、最適な培養条件を見出すこと、の2点を検討した。 3、培地中のHyg濃度を25mg/L以上に高めると形質転換イネの穂に障害が見られた。一方、Hyg濃度を2.5mg/L、0.25mg/Lと低下させると障害は認められなかったが、Hyg無添加のものと比べ穂の生育に変化は見られなかった。 4、穂の乾物増加は培地の糖濃度に大きく依存した。中でも、培地の糖が単糖のみで構成され40g/Lの濃度の時に最も高い乾物増加を示した。しかしながら、培地の糖が単糖のみの場合、穂は緑色を多く残し、子実中の遊離の糖含量が増加した。このことから、培地の糖が単糖のみの場合は、穂の生長を持続させる働きはあるものの、登熟の進行に伴う貯蔵物質の蓄積は遅れる傾向にあるものと推察した。 5、培地の窒素源としてグルタミンを用いた場合、あるいは窒素無添加の場合、穂はほとんど生長しなかった。一方、硝酸アンモニウムを0.5g/L(N)の濃度で用いた場合、子実の形態・タンパク質含量等は圃場で得られた子実のそれと同等であったが、2g/L(N)の濃度で用いた場合は、乳白化を起こすとともにタンパク質組成に変化が見られた。 6、以上より、本実験の条件下では抗生物質(Hyg)の使用は有効ではないこと、培地の糖・窒素の組成は子実の生長に大きな影響を及ぼし、その最適濃度は糖40g/L、窒素0.5g/L(N)であることが明らかとなった。
|