Research Abstract |
本年度は,入念な関連資料収集を行うとともに,沖縄県における冬期を中心とした探索調査を行い,農業害虫の個体群抑制に有用と考えられる種の選定を試みた.実際に現地で調査を行ったのは,初冬(11月下旬〜12月上旬)および初春(3月初旬)の2回である.本調査では,将来的な生物防除利用に不可欠な要件を満たすもの,つまり,捕食性の種であって,比較的簡単に得られ,農耕地付近にも普通に生息し,かつ低温期にも休眠することなく連続的に発生しているものに主眼をおいた探索を行った.なお,当初予定していた小笠原諸島の調査は,本年度は乾燥のため探索調査が困難との情報を得たため,次年度に見送った. この結果、上記の探索条件に適合する種として,Pseudoloxops takaii, Zanchius ryukyuensis, Druthmarus miyamotoi, Campylomma chinense, Sejanus neofunereusが見いだされた.これらのうち,P.takaiiはアザミウマやアブラムシを,Z.ryukyuensis, D.miyamotoi, S.neofunereusはヒメヨコバイを選好的に捕食しているのが観察された.いずれの種も周年にわたって発生していることが確認されたため,季節を問わず,特定の害虫の生物防除に有効性が示唆された.また,これらはいずれも沖縄本島以南の亜熱帯地域のみに分布するため,温帯域における冬期の施設栽培や,夏期の露地栽培作物の害虫駆除に利用した場合,越冬できず定着する懸念はないと考えられるので,日本本土でも活用できる可能性がある.一方,C.chinenseについては,アザミウマやキジラミを捕食しているのが観察されたが,農作物を加害することが知られているため,生物防除利用は難しいと思われる.
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