Research Abstract |
本年度は,昨年度実施した沖縄県における探索調査におけるデータに加え,秋期に行った再度の現地調査で得られたデータに基づいて,農業害虫の個体群抑制に有効に働くと考えられる種のスクリーニングを試みた.2年度にわたった探索調査により,かなり多くの種が捕食性天敵となりうることが明らかとなったが,将来的な生物防除利用に不可欠な要件を満たすもの,つまり,捕食性の種のなかでも「比較的簡単に得られ(=天敵資材の調達が容易に行える),農耕地付近にも普通に生息し(=人為環境下である農業生態系でも有効に働く),かつ低温期にも休眠することなく連続的に発生する(=冬季の施設栽培に適用できる),特定の昆虫種を捕食する(=無害な種を脅かす危険が少ない),植物にほとんど依存しない(=農作物を加害する危険性がない)」という特性条件を併せもつ次の6種を,具体的な候補として確定した:(1)Isometopus mahal,(2)Pseudoloxops takaii,(3)Zanchius ryukyuensis,(4)Druthmarus miyamotoi,(5)Pilophorus typicus,(6)Sejanus neofunereus,(7)Deraeocoris ryukyuensis.それぞれの捕食対象種として,カイガラムシ(1),アザミウマ(3,5),コナジラミ(4,5),アブラムシ(2,7),キジラミ(3,5,7),ヒメヨコバイ(4,5,6)が確認された.いずれの種も周年にわたって連続的に発生していることが確認されており,季節を問わず,特定の害虫の生物防除に有効であることが示唆された.また,これらはいずれも沖縄本島以南の亜熱帯〜熱帯地域に分布が限定されるため,温帯域における冬期(加温)施設栽培や,夏期の露地栽培作物の害虫駆除に利用した場合でも,越冬できず定着する懸念はないと考えられるので,日本本土でも大いに活用できる可能性を秘めている. なお,本成果の大部分は,2002年7月にロシア・サンクトペテルブルクで開催された国際異翅半翅学会において発表し,カスミカメムシ類の有効性を世界に向けて周知することができた。
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