2001 Fiscal Year Annual Research Report
緑膿菌エコーシステムにおけるバイオフィルムの酵素・遺伝学的特性解析とその応用
Project/Area Number |
13760067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 助教授 (30273519)
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Keywords | エコーシステム / バイオフィルム / 緑膿菌 / アルギン酸 / アルギン酸リアーゼ / ポリリン酸キナーゼ / Sphingomonas属細菌 / 運動性 |
Research Abstract |
バイオフィルム(BF)は、微生物の重要な生存様式(エコーシステム)であるが、その系の複雑さのために充分な解析が進んでいない。鞭・線毛を持ち活発な運動性の緑膿菌は、環境条件に応じて菌体外に多糖アルギン酸を分泌し、これをBFとして周囲から隔離された生存様式を示し、時には重篤な呼吸器疾患を発症する。さらに、BFを分解し遊離することにより、新たな部位へ移動する。緑膿菌の運動性には、ポリリン酸キナーゼ(PPK)により合成されるポリリン酸の関与が指摘されている。本研究では、米国イリノイ医科大学Chakrabarty教授より分与された2種類の緑膿菌(PAO1,8830)の生存様式に関する微生物学的特性を解析した。PAO1はアルギン酸非生産株として知られているが、固体培地において8830(生産株)と同等のムコイド性を示した。一方、液体培地においては8830のみがアルギン酸を生産した。従って、PA01での酸素によるアルギン酸合成抑制システムの存在が示唆された。本研究室で分離されたSphingomonas属細菌由来のアルギン酸リアーゼ(A1-III)は、緑膿菌アルギン酸分解酵素(AlgL)と有意な相同性を示した。そこで、緑膿菌のBF分解機構を解析する目的で、A1-IIIの部位特異的変異とX線結晶構造解析による構造機能相関を明らかにした結果、Tyr246が触媒反応に必須であることが判った。Tyr246はAlgLにも保存されているため、AlgL変異株(Tyr→Phe)を用いたBF分解・遊離機構の解析が可能となった。また、運動性に関わるPPK遺伝子をPA01よりクローニングした。PPKは膜タンパク質であることが報告されているが、遺伝子工学的改変により、大腸菌におけるPPKの可溶性大量発現及び精製系を確立した。今後、PPKのX線結晶構造解析と運動性を制御するためのPPK阻害剤の解析を行う予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Hye-Jin Yoon: "Crystal structure of alginate lyase A1-III complexed with trisaccharide product at 2.0 Å resolution"Journal of Molecular Biology. 307(1). 9-16 (2001)
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[Publications] Wataru Hashimoto: "Polysaccharide lyase : molecular cloning, sequencing, and overexpression of the xanthan lyase gene of Bacillus sp. strain GL1"Applied and Environmental Microbiology. 67(2). 713-720 (2001)
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[Publications] Hye-Jin Yoon: "Effect of His192 mutation on the activity of alginate lyase A1-III from Sphingomonas species A1"Journal of Microbiology and Biotechnology. 11(1). 118-123 (2001)
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[Publications] Wataru Hashimoto: "Super-channel in bacteria : function and structure of a macromolecule import System mediated by a pit-dependent ABC transporter"Bioscience, Biotechnology and Biochemistry. 65(9). 1949-1956 (2001)
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[Publications] 橋本 渉: "細菌『超チャネル』の構造と高分子輸送機能"生化学. (印刷中). (2002)
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[Publications] Yumiko Mishima: "Super-channel in Bacteria : Function and Structure of the Macromolecule Import System Mediated by a Pit-dependent ABC Transporter"FEMS Microbiological Letters. 204. 215-221 (2001)
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[Publications] Wataru Hashimoto: "Biopolymers"Wiley-VCH(印刷中). (2002)