2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13760105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金 東浩 大阪市立大学, 大学院・生活科学研究科, 助手 (70326271)
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Keywords | ラクトフェリン / 受容体 / リガンドブロッティング / アフィニティーカラム |
Research Abstract |
ラクトフェリンはトランスフェリンの一種で、鉄結合性糖タンパク質である。ヒトの母乳、特に初乳に高濃度に見られる。また、成人の涙や唾液、鼻の分泌液、精液などの消化や吸収、生殖に関係する分泌液にも多く含まれている。多くの研究がラクトフェリンの生理学的な役割に関して行われ、現在までに抗菌活性、抗ウイルス活性、抗酸化活性、免疫機能活性などが明らかになり、その栄養生理学的役割は大である。しかし、ラクトフェリンの代謝とその詳しい作用機構に関しては明確ではない。ラクトフェリンの受容体を明らかにする事はラクトフエリンの栄養生理学的な有用性をさらに高める事である。私たちは、最初にラクトフェリンに対するリガンドブロッティングを行いラクトフェリン結合タンパク質の組織分布を検討した結果、組織間で分布が異なっていることが明らかになった。更に、分子量の異なるラクトフェリン結合タンパク質が複数存在することが明らかになった。また、小腸では600、250kDaの位置にバンドが確認された。それらのラクトフェリン結合タンパク質をラクトフェリンのアフィニティーカラムを用いて精製した。ラクトフェリン結合タンパク質はNaCl濃度依存的に溶出され、分子量は600、250、150kDaであった。溶出したタンパク質をβ-MEで還元すると600kDaのバンドが消失し、120kDaのバンドが出現した。このことから、600kDaのタンパク質は120kDaを含む幾つかのタンパク質と複合体を形成していることが示唆された。精製したタンパク質の一次構造を明らかにするためにアミノ酸の配列を解析した。250kDaのタンパク質のアミノ酸配列を解析した結果、詳しい配列は現段階では公表できないが、ムチン(mucin)というタンパク質と相同性が高い新規のタンパク質であることが明らかになった。150、120kDaのタンパク質については現在解析している。 以上のように、ラクトフェリン結合タンパク質は複数存在し、更に、組織間でも分布が異なっていることを明らかになった。これらの実験結果は、ラクトフェリン代謝は、従来予想されていたよりも非常に複雑で、同一組織であっても取り込み経路は複数存在し、組織により代謝様式が異なることを示唆するものである。現在、それぞれのアミノ酸の配列を解析し、遺伝子解析やクトフェリン結合能解析とin vitro, in vivoでの機能解析などの研究を計画している。
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