2001 Fiscal Year Annual Research Report
南極海のマイクロネクトン・大型動物プランクトンの多様性と群集構造
Project/Area Number |
13760139
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 淳 東京大学, 海洋研究所, 助手 (10282732)
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Keywords | 南大洋 / 南極生態系 / 動物プランクトン / 浮遊性被嚢類 / ナンキョクオキアミ / サルパ類 |
Research Abstract |
東京大学海洋研究所研究船白鳳丸による南極航海(航海番号KH-94-4)において採集された試料を用いて、動物プランクトン・マイクロネクトンの高次分類群ソーティングを実施し、その結果に基づき卓越した動物群であるサルパ類の昼夜鉛直分布、ならびに摂餌に関する研究を行い、論文作成を行った。得られた成果は、Polar BiologyとPlankton Biology and Ecology誌に公表された。以下に得られた結果の概要を示す。 サルパ類Salpa thompsoniは太陽放射がゼロになる時間帯だけ水面付近まで移動し、日が出てくると同時に下降し始め120-300mまで下がる。それらは太陽放射が最大になる昼間に再び上昇を始め、餌である植物プランクトンがもっとも多い層(30-120m)に明るいうちから到達し比較的長時間そこに留まる。通常、動物プランクトンの日周鉛直移動は視覚捕食者からの回避行動であることが知られているが、サルパ類は餌の多い層に比較的長時間滞在することによって餌の少ない南大洋外洋域で少しでも摂餌機会を増加させているのかもしれない。明るい層に長く留まることは捕食される危険性を増やすことにもつながるが、サルパ類の捕食者でこの層と分布が重なるものはまだ知られていない。サルパ類の摂餌行動を調べた結果、南大洋で通常他の大型動物プランクトンが利用できない微細な(0.2-20μm)粒子を捕食することが出来るということがわかった。このことは、ナノ、ピコサイズの微小藻類が卓越する南大洋外洋域にうまく適応した摂餌様式であると考えられる。南大洋でサルパ類が高い現存量を誇る理由のひとつに、それらの特殊な日周鉛直移動様式と摂餌生態が関与しているのかもしれない。 南極観測船「しらせ」において採集された試料を用いて、夏季南大洋インド洋区における表層水中の動物プランクトン現存量に関する研究を行い、論文作成を行った。得られた成果は、南極資料誌上に公表された。 研究船白鳳丸による南極航海(航海番号KH-01-3)において、大型トロールネット(RMT)他を用いた動物プランクトン試料の採集、ならびにナンキョクオキアミの摂餌実験、サルパ類の摂餌リズム実験を行った。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 西川 淳, 津田 敦: "Diel vertical migration of the pelagic tunicate, Salpa thompsoni in the Southern Ocean during the austral summer"Polar Biology. 24. 299-302 (2001)
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[Publications] 西川 淳, 津田 敦: "Feeding of the pelagic tunicate, Salpa thompsoni on flagellates and size-fractionated chlorophy II particles"Plankton Biology and Ecology. 48・2. 133-135 (2001)
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[Publications] 西川 淳: "サルパ類研究のどこが面白いか?"月刊海洋. 号外No.27. 207-215 (2001)
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[Publications] 工藤栄, 伊倉千絵, 高橋晃周, 西川淳, 石川輝, 鷲山直樹, 平譯亨, 小達恒夫, 渡辺研太郎, 福地光男: "JARE39,-40「しらせ」航路に沿った夏季南大洋インド洋区における表層水中の動物プランクトン現存量"南極資料. 45・3. 279-296 (2001)