2002 Fiscal Year Annual Research Report
南極海のマイクロネクトン・大型動物プランクトンの多様性と群集構造
Project/Area Number |
13760139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 淳 東京大学, 海洋研究所, 助手 (10282732)
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Keywords | 南大洋 / 南極生態系 / 動物プランクトン / 浮遊性被嚢類 / ナンキョクオキアミ / サルパ類 |
Research Abstract |
本年度も引き続き、東京大学海洋研究所研究船白鳳丸による南極航海(航海番号KH-94-4、KH01-3)において採集された試料を用いて、動物プランクトン・マイクロネクトンの高次分類群ソーティングを実施し、その結果に基づき卓越した動物群であるサルパ類の昼夜鉛直分布、ならびに摂餌に関する研究を行い、論文作成を行った。得られた成果は、すでにPolar Biology誌、Plankton Biology and Ecology誌等に公表されている。本年度はシンポジウム発表を1件行った(日本海洋学会秋季大会)。新たな論文は受理されなかったが、今後、1年以内に投稿予定である。以下に得られた結果の概要を示す。 大型動物プランクトン全体の個体密度は64-2709inds.・10^3m^<-3>の範囲で、湿重量は2-263mg・m^<-3>の範囲で変動した。両者とも発散線の北側(Stn.13)で南側(Stn.11,43)に比べて有意に高かった(1-way ANOVA, Turkey-Kramer's post-hoc test, p<0.05)。また、昼夜による個体密度・湿重量の違いは各測点ともみられなかった(Mann-Whitney U-test)。出現した大型動物プランクトンは8つの動物門におよんだ。現在種まで同定が進んでいる動物群のうち最も種数が多かったのはカイアシ類で、15種が出現した。個体密度で卓越した動物群は測点により異なった。AD北側のStn.13ではサルパ類Salpa thompsoniが圧倒的に卓越し、カイアシ類がこれに続いたが、南側のStn.11からはサルパ類は全く出現せず、かわってカイアシ類・ヤムシ類・翼足類が卓越した。一カ月後の南側の群集組成は全体の傾向は変わらないが、翼足類に替わってオキアミ類が相対的に増加した(Stn.43)。群集構造をピアンカのα-indexを用いたクラスター分析により解析した。群集は大きく(1)サルパ類が卓越する群集、(2)カイアシ類が卓越する群集、(3)オキアミ類が卓越する群集に分けられた。サルパ類が卓越する群集の多様度H'はカイアシ類、オキアミ類が卓越する群集のそれに比べて有意に低く、独占状態の高い群集であることが示された。以上のように、発散線をはさんで水平的、鉛直的、時期的にも異なる群集が存在していたことが明らかになった。これらのデータはあくまでスナップショット的なものではあるが、南大洋で従来報告されている大型動物プランクトン群集を鉛直的にも解析できたということで、貴重なデータであると考えられる。今後現場の基礎生産量などのデータともつきあわせて、より詳しい議論を行ってゆきたい。
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