Research Abstract |
L-カルニチンの測定に広く用いられているMarquis & Fritz (1964)の酵素法を,骨格筋から0.3M過塩素酸で抽出した酸可溶性画分を試料として,マイクロプレート上で測定できる条件を平成13年度に検討した。この条件を用いて,平成14年度は家畜別に半腱様筋のL-カルニチン量を調べた結果,肉用鶏(ブロイラー),豚,牛(黒毛和種),鹿(エゾシカ)および山羊は4.6,12.6,48.6および66.0mg/100g肉となった。この結果から,赤みの強い色調の筋肉ほどL-カルニチン量が多いことが推察された。これを裏付けるために,骨格筋の色素タンパク質であるミオグロビン量を調べたところ,1.0,1.5,4.1および7.9mg/g肉とL-カルニチン量と同じ順に多くなることが分かった。この原因として,L-カルニチンは脂肪酸の酸化と密接に関係し,ミオグロビンは酸素の貯蔵などいずれも細胞内で代謝と関係した物質であることから,部位が同じであっても骨格筋を構成している筋線維型に差違が関係している可能性が考えられた。筋線維型を分類する方法は様々であるが,本実験ではミオグロビンを指標として白色筋線維と赤色筋線維の構成を骨格筋別にL-カルニチン量を調べることにした。実験動物としては,白色〜赤色筋線維まで容易に分類しやすい卵用鶏を用いた。使用した筋肉部位は,Ahn et al. (1993)らの報告に従って白色筋線維が大部分を占める深胸筋,逆に赤色筋線維が大部分を占めるヒラメ筋,さらに両筋線維が混在する縫工筋とした。深胸筋,縫工筋およびヒラメ筋では,L-カルニチン量は4.8,10.3および11.5mg/100g肉となり,ミオグロビン量は0.9,2.2および3.3g/g肉となった。L-カルニチン量とミオグロビン量との相関係数は0.994となり,両者には高い相関関係が存在することが考えられた。赤色筋線維内でL-カルニチンが多い理由はまだ不明であるが,赤色筋線維の脂肪滴が白色筋線維より大きいこと,赤色筋の方がリパーゼ活性は高いなどの報告もあることから,赤色筋線維内で脂質代謝が活発なことが推察される。つまり,脂肪酸の酸化が活発に起きるために,L-カルニチンが多く存在する必要があるのではないかと考えられた。
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