2001 Fiscal Year Annual Research Report
栄養素摂取による腸管MAPキナーゼ経路の活性化機構と生理機能の解明
Project/Area Number |
13760196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村井 篤嗣 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (10313975)
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Keywords | 栄養素 / 腸管 / MAPキナーゼ / リン酸化 / 摂食 / 消化 / 吸収 / ラット |
Research Abstract |
腸管は栄養素吸収の場であるとともに、栄養素による刺激の受容器としても働く。これまでに、消化管内分泌細胞株を用いた細胞培養系では、栄養素がMAPキナーゼ(mitogen-activated protein kinase)経路を活性化し、その結果、様々な遺伝子の発現を上昇させることが明らかとなった。しかしながら、個体レベルで栄養素摂取と腸管MAPキナーゼ経路の活性化を検証した報告は無く、本キナーゼ経路の活性化が如何なる生理現象へと結びつくのかについても不明である。本研究では、腸管におけるMAPキナーゼ経路活性化の生理的意義を明らかにすることを最終的な目的とし、その第一段階として、栄養素摂取による小腸でのMAPキナーゼ活性の変化を調査した。 6週齢のWistar系統雄ラットにカゼインを蛋白質源とする実験飼料を1週間給餌し、予備飼育を行った。ラットは48時間の絶食後、実験飼料を0.5時間摂取させ、さらに0.5, 1, 2, 4, 8および24時間後に腸管を摘出した。腸管MAPキナーゼのリン酸化量は、ヒトーリン酸化p44/p42 MAPキナーゼ抗体を用いたウェスタンブロッティング法により測定した。 小腸近位部では摂食後0.5時間でリン酸化を受けたp44およびp42 MAPキナーゼ量が約3.5倍上昇した。その後も、リン酸化を受けたp44およびp42 MAPキナーゼ量は同程度の増加を維持し、24時間後においても約2.5倍の増加が観察された。小腸中央部でも同様の変化が見られ、摂食後0.5時間でリン酸化p44およびp42 MAPキナーゼ量は約3倍上昇した。一方、小腸遠位部では対照群との間に差が見られず、同一処理群での誤差も大きくなる傾向が見られた。以上の結果より、小腸近位部から中央部の粘膜層において、栄養素摂取によりMAPキナーゼ経路が活性化されることが明らかとなった。
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