Research Abstract |
脂肪肉腫23例,良性脂肪性腫瘍13例,血管筋脂肪腫4例,悪性線維性組織球腫(MFH)11例,横紋筋肉腫5例,平滑筋肉腫5例,隆起性皮膚線維肉腫4例,線維肉腫1例,悪性神経鞘腫瘍4例,血管肉腫1例,粘液腫1例のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いた検討を行った.1.各腫瘍のPPARγ,C/EBPαの陽性細胞数を計測し,各腫瘍内での陽性率,標準偏差を求めた.2.粘液,円形型及び高分化型脂肪肉腫,MFHについてはPPARγ,C/EBPαの発現の相関性について,単回帰分析を行い検討した.3.免疫組織化学的に及び筋系,神経系,間葉系マーカーの免疫組織化学的検索及び特種染色の検索を行い,陽性細胞の形態的,免疫組織化学的特徴について検討した.その結果,粘液円形型は全例でPPARγ,C/EBPαともびまん性に陽性で,症例間のばらつきは少ない一方,高分化型ではいずれの陽性率も低く,ばらつきが大きかった.一方,MFHについては8例(58%)でPPARγが陽性,そのうち,4例(29%)でC/EBPαとの共発現が認められた.C/EBPαが単独で陽性となる症例は認められなかった.組織学的には陽性細胞には形態的な脂肪への分化は確認できず、他のマーカーの発現との関連性は乏しいと考えられた.脂肪系腫瘍、MFH以外の症例ではPPARγ、C/EBPαは検出できなかった.単回帰分析では,粘液型円形細胞型及び高分化型脂肪肉腫では両者の発現に高い相関性が認められた.一方,MFHには有意な相関性は認められなかった.以上から,PPARγ,C/EBPαは脂肪分化のマーカー,特に粘液円形型脂肪肉腫と他の粘液性肉腫との鑑別に応用可能と考えりれた.両者の高発現の見られる脂肪肉腫及び両者のアンバランスな発現の見られるMFHについては今後、核酸レベルでの発現やその異常について検討を進める必要があると考えられる.
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