2002 Fiscal Year Annual Research Report
肺がんの発生・進展への染色体不安定性の関与について
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13770103
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
谷田部 恭 愛知県がんセンター, 研究所・分子腫瘍学部, 研究員 (90280809)
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Keywords | 遺伝子不安定性 / 染色体不安定性 / 染色体分析 / 肺癌 / シミュレーション / 統計解析 / 理論生物学 |
Research Abstract |
染色体不安定性は多くの上皮性悪性腫瘍で普遍的に観察される現象であり、その原因として種々の機構が提唱されている。一部の大腸癌においてはBUB1遺伝子などの異常によりmitotic check pointに変化を来たすことが示されている。しかしながらこの不安定性がどのように、どのような効果を腫瘍に与えているかは依然不明である。本研究では、腫瘍本体より数ヶ所、前癌病変部や転移腫瘍などの細胞から核を採取し染色体不安定性を計測することを通して、がん化における染色体不安定性の意義について考察することを主眼とした。まず、染色体不安定性を持つ肺癌細胞株が、一定の分散を持ってその異数性が維持される機構について検討を加えた。5つの肺癌細胞株において染色体数の偏移について検討した結果、どの染色体も同程度の偏移を示すグループと染色体ごとにその偏移が大きく異なるグループに分けられることがわかった。前者のグループでは、mitotic check point異常などの分配に関する非特異的な異常に基づいて一定の確率で染色体の不分配が生じた結果であると推測できる。染色体不安定性均衡分配が細胞増殖になんら影響を与えないとすると、シミュレーションでは染色体数の分散値は分裂回数に比例して増加するため、実測値とは大きくかけ離れることになる。そこで、モデルとして、中央値以外の染色体数を有する細胞集団のわずか5%に何らかの増殖力低下が生じると仮定すると、実測値に合う結果を示した。一方、このモデルでは不均等分配が生じる確率は、染色体の異数性維持機能とは関係なく、染色体のばらつき程度を規定する要因であることが示唆された。この法則を用い、実際にヒト肺癌細胞株において観察された染色体数のばらつきから逆算すると、およそ4回の分裂に一回の不均等分配が生じる起きている可能性が示された。すなわち、このモデルで腫瘍細胞は、細胞集団のわずかな増殖力の低下で、高頻度の不均等分配という特性を獲得していることになることが推測された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Yatabe Y, Osada H, et al.: "Decreased expression of 14-3-3sigma in neuroendocrine tumors in independent of origin and malignant potential"Oncogene. 21. 8310-8319 (2002)
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[Publications] Yatabe Y, et al.: "TTF-1 Expression in Pulmonary Adenocarcinomas"Am J Surg Pathol. 26. 767-773 (2002)
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[Publications] Takahashi T, Kozaki K, Yatabe Y, et al.: "Increased expression of COX-2 in the development of human lung cancers"J Environ Pathol Toxicol Oncol. 21. 177-181 (2002)
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[Publications] Osada H, Tatematsu Y, Yatabe Y, et al.: "Frequent and histological type-specific inactivation of 14-3-3sigma in human lung cancers"Oncogene. 21. 2418-2424 (2002)
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[Publications] Mizuno K, Osada H, Konishi H, Yatabe Y, et al.: "Aberrant hypermethylation of the CHFR prophase checkpoint gene in human lung cancers"Oncogene. 21. 2328-2333 (2002)