2001 Fiscal Year Annual Research Report
寄生適応における回虫ミトコンドリア電子伝達系酵素の発現調節機構
Project/Area Number |
13770123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
網野 比佐子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10323601)
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Keywords | 回虫 Ascaris suum / ミトコンドリア / 電子伝達系 / コハク酸脱水素酵素 / フマル酸還元酵素 / アイソザイム / 酸素適応 / Caenorhabditis elegans |
Research Abstract |
私は、生活環により生育環境が著しく変化する寄生性線虫である回虫をモデル系とし、寄生適応現象の分子レベルでの解明を目指している。回虫では、成虫期には嫌気的環境の哺乳類小腸内に寄生して嫌気的エネルギー代謝を行い、一方、受精卵より感染性を有する第三期幼虫に至る自由生活期には発生に酸素を必要とし哺乳類型の好気的呼吸を行うことが見い出されている。これまで、1)その生活環において成虫型(嫌気的)および幼虫型(哺乳類型好気的)ミトコンドリア電子伝達系複合体IIおよびIVの活性発現が著しく変化すること、2)電子伝達系酵素のcDNAクローニングにより成虫型(フマル酸還元酵素、FRD)および幼虫型(コハク酸脱水素酵素、SDH)の触媒を構成するフラビンタンパク質などに機能的に異なるアイソフォームが存在すること、また、stage-specficに発現する回虫ミトコンドリア複合体IIアイソザイムのタンパク質化学的および遺伝子発現レベルの解析を行い、3)複合体IIの4サブユニットのうちフラビンタンパク質(Fp)およびシトクロームb小サブユニット(CybS)が両者で異なっておりstage-specificな発現が転写レベルで制御を受けていること、4)鉄-硫黄タンパク質サブユニット(lp)については成虫型と幼虫型が同一であること、5)最近、シトクロームb大サブユニット(CybL)についてもlp同様、成虫型と幼虫型が同一であること、また、幼虫型CybS精製標品のN末端解析の結果を基にcDNAクローニング、一次構造上成虫型とは異なるユニークなものであること、を明らかにしている。5)については、現在、投稿準備中である。そこで、本実験を用いて酸素適応におけるミトコンドリア機能の多様性および核とミトコンドリアDNAの協調的発現調節の分子機構を解明することを目的とし、酸素分圧変化による呼吸鎖電子伝達系酵素の特性とその遺伝子発現制御機構の解析を行う。平成13年度には、回虫複合体IIの各サブユニット遺伝子の遺伝子発現制御領域(シス・エレメント)の解析を目的とし、ゲノムクローンの全塩基配列を開始し、現在も引き続き行っている。また、構造活性相関という観点から、回虫の類縁生物であるCaenorhabditis elegansにおいて、回虫成虫型および幼虫型複合体IIの発現系を確立し、翻訳系およびミトコンドリア輸送系の互換性を確認した。さらに、成虫特異的酵素活性であるFRD活性を検出した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Eizo Takashima, et al.: "Isolation of mitochondria from Plasmodium falciparum showing dihydroorotate dependent respiration"Parasitology International. 50(4). 273-278 (2001)
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[Publications] Hiroko Miyadera, et al.: "Altered quinone biosynthesis in the long-lived clk-1 mutants of Caenorhabditis elegans"Journal of Biological Chemistry. 276(11). 7713-7716 (2001)