2002 Fiscal Year Annual Research Report
死を望む終末期がん患者における身体的・心理社会的・実存的苦痛に関する研究
Project/Area Number |
13770214
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
明智 龍男 国立がんセンター, 精神腫瘍学研究部, 室長 (80281682)
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Keywords | 終末期がん / 希死念慮 / 安楽死 / 身体的苦痛 / 精神的苦痛 / 実存的苦痛 / 終末期ケア |
Research Abstract |
【目的】本研究では、死を望む終末期がん患者の背景に存在する身体的・心理社会的・実存的苦痛など様々な苦痛を明らかにすることにより、終末期がん患者が希望を失うことなく生活を送ることが可能となる包括的な介入方法を確立するうえでの基礎的知見を得ることを目的とした。 【対象と方法】対象は、国立がんセンター東病院緩和ケア病棟に登録した終末期がん患者のうちがん告知を受けている、面接調査が可能な身体状態にあるものとし、緩和ケア病棟登録時および入院時に、面接により希死念慮および安楽死要請の意思を評価した。併せて、これらの関連要因および予測要因を検討するために、緩和ケア病棟登録時に、身体的苦痛(痛み、呼吸困難、全身倦怠感)、精神的苦痛(うつ病、心理的苦痛、認知機能)、実存的苦痛(依存、尊厳の喪失など)に関して調査を行った。解析に際しては、多重検定の問題を考慮し、Bonferroniの修正を行った。 【結果】研究期間中、緩和ケア病棟に登録し、同外来への受診を開始した764名のうち、適格症例は257名であったが、研究参加への拒否例、6ヶ月以上の生存例等を除き、最終的に登録時140名、入院時57名が解析対象となった。緩和ケア病棟登録時/入院時の希死念慮、安楽死要請の意思の頻度は各々8.6%/4.0%、5.0%/5.0%であった。多変量解析の結果、緩和ケア登録時の希死念慮発現に関連する有意な要因は心理的苦痛のみであった(P=0.0001)。また、緩和ケア病棟入院時の安楽死要請の意思の出現に関する有意な予測要因は見出せなかったが、希死念慮に関しては、低い認知機能が予測要因となり得る可能性が示唆された(P=0.04)。 【考察】以上の結果より、わが国の終末期がん患者においても希死念慮や安楽死に対する要請の意思は無視できない割合に認められることが示された。また、標準的な緩和ケアを受けている患者に対しては、今後、心理的苦痛を含めたより包括的なケアが必要であることが示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tatsuo Akechi: "Predictive factors for suicidal ideation in patients with unresectable lung carcinoma : -A 6-month follow-up study"Cancer. 95. 1085-1093 (2002)
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[Publications] Tatsuo Akechi: "Clinical factors associated with suicidality in cancer patients"Japanese Journal of Clinical Oncology. 32. 506-511 (2002)
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[Publications] Tatsuo Akechi: "Somatic symptoms for diagnosing major depression in cancer patients"Psychosomatics. (in press).
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[Publications] 明智龍男: "担がん患者のメンタルヘルス"Clinical Neuroscience. 20. 538-540 (2002)
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[Publications] 明智龍男: "進行肺癌患者の精神的ケア"日本胸部臨床. 61. 955-968 (2002)
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[Publications] 明智龍男: "サイコオンコロジーからみたがん性疼痛"現代のエスプリ. 426. 149-157 (2002)