2001 Fiscal Year Annual Research Report
頭部外傷による神経細胞の再生能力の破綻と細胞死の解明
Project/Area Number |
13770225
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
猩々 英紀 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (60284626)
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Keywords | 頭部外傷 / グルタミン酸トランスポーター / グルタミン合成酵素 |
Research Abstract |
本研究は頭部外傷による神経細胞損傷に関する研究である。損傷後の神経細胞ではグルタミン酸トランスポーター(EAAC1)の発現が上昇し、同時にグルタミン合成酵素が発現する。即ち、グルタミン酸を細胞内に積極的に取り込み、細胞外のグルタミン酸濃度を低下させ、同時に細胞毒性のあるグルタミン酸を無毒なグルタミンに変換する事で神経細胞を保護していると推察されている。そこで、頭部外傷によるグルタミン酸トランスポーターやグルタミン合成酵素の発現量の変化を調べるために、頭部外傷モデル動物を作製した。全身麻酔下のラットの頭頂骨正中部にドリルで0.5cmの骨窓を開け、femaleluer-lockを留置し48時間飼育した。その後、全身麻酔下で脳損傷作製装置Fluid Percussion Deviceを装着し、側方打撃(約3.5atm)を与えた。打撃約48時間後に灌流固定し、脳のパラフィン切片を作製した。その結果、肉眼所見では、打撃部を中心に硬膜外出血と硬膜下出血を認めた。また、脳実質に出血を認めた。組織所見では、打撃部直下の白質内をに軽度の出血を認め、灰白質の神経細胞に変性を認めた。また、白質には数個のspheroid小体を認め、軸索損傷が観察された。次に、打撃の強度を変化させ脳損傷を与えた。約2.5atmでは、白質内に極軽度の出血を認めた。一方、約5.7atmでは約半数が打撃直後に死亡した。なお、打撃後48時間生存したラットの脳では打撃部直下の灰白質に広範な出血を認めた。従って、損傷の程度および範囲は打撃の強度に依存していることが示唆された。現在、グルタミン酸トランスポーターEAAC1やグルタミン合成酵素等の各種抗体を用い免疫染色を行っている。今後、これらの発現量の変化を観察し、受傷後の神経細胞の防御と再生能力の有無を調べることで神経細胞の致死機序を検討する。
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