2002 Fiscal Year Annual Research Report
外傷性脳障害における興奮性アミノ酸トランスポーターの法医病理生態学的意義の解明
Project/Area Number |
13770226
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池松 和哉 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (80332857)
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Keywords | グルタミン酸 / グルタミン酸トランスポーター2 / 法医剖検脳 / 外傷性脳障害 |
Research Abstract |
頭部外傷症例(TBI)25例についてグルタミン酸トランスポーター2(EAAT2)およびアストロサイトを特異的に認識するGFAPの染色様態を検討した。その結果、即死例および短時間死亡例(計6例)におけるEAAT2の発現様態はその半数がコントロール群と同様であった。生存時間1時間から1日以内の症例では12例中11例で連続性および高密度のEAAT2の発現が認められた。生存時間2日以上の症例では7例中6例で散在性の発現が認められた。また、生存時間1時間以上で脳挫傷を伴う全症例では、挫傷部周囲の灰白質にアストロサイトが存在するにもかかわらずEAAT2の発現は認められなかった。TBIでは細胞外グルタミン酸濃度は受傷後早期に著明に上昇し、その後正常濃度に戻ることが知られている。生存時間1時間から1日症例で認められたEAAT2の発現様態は、TBI後の細胞外グルタミン酸濃度の上昇による興奮毒性から神経細胞を防御するためにEAAT2がアップレギュレートしたことを反映したものと考える。また、生存時間2日以上の症例における発現様態は細胞外グルタミン酸濃度が正常濃度に減少することによりEAAT2がダウンレギュレートされたのかもしれない。また、生存時間1時間以上の脳挫傷を伴う症例の挫傷部周囲では、アストロサイトが存在するにもかかわらずEAAT2の発現は認められなかった。この挫傷部周囲のEAAT2発現様態はアストロサイトが情報伝達より傷害修復にその機能をシフトした可能性が示唆される。さらに脳挫傷周囲ではEAAT2が消失することにより、細胞外グルタミン酸濃度の上昇が持続し、同部位における神経細胞の変性・壊死に強く関与しているものと考えられる。
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Research Products
(1 results)