2001 Fiscal Year Annual Research Report
日本人嚢胞性線維症患者におけるCFTR遺伝子変異の分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
13770310
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
四方 千裕 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (90277038)
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Keywords | 嚢胞性線維症 / cystic fibrosis / 遺伝子変異解析 / CFTR / 日本人 / SSCP / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
嚢胞性線維症(cystic fibrosis,CF)は日本人を始めとする東洋人種においては稀な疾患であり,臨床上はこれまでわが国で注目されていなかった.欧米でのCF研究では原因遺伝子CFTRの単離同定,遺伝子変異の解析,CFTR蛋白の機能解明,遺伝子治療を含めた新しい治療法の開発など,驚異的な成果が上がっている.したがって,欧米に後塵を拝した我が国のCF研究においては,まず日本人のCF症例におけるCFTR遺伝子の突然変異の解析が急務である. 平成13年度は,厚生労働省難治性膵疾患調査研究班を通じて,他施設から依頼を受けた同一家族内のCF症例におけるCFTR変異につき解析した.症例は血族結婚ではない両親に生まれた兄妹で,ともに満期正常分娩で出生.兄(解析時21歳)は生後6ケ月呼吸器感染症と脂肪便にて,妹(同16歳)は生直後より脂肪便にて発症し,現在までに膵機能不全,慢性呼吸器感染症,汗Cl濃度が各々166,100mmol/Lなど典型的な臨床像を呈している.まず,欧米人に多い32種のCFTR遺伝子変異をアリル特異的オリゴプローブを用いたdot blot hybridizationで検討し,次いで全27エクソンとその近傍領域に対しPCR-SSCP解析を行い,塩基配列をSanger法にて直接解析した結果,両症例でエクソン9のcDNA1454 T→Cへの1塩基変異に伴う第441アミノ酸コドンのLeu→Pro変異(L441P)と,エクソン1の5'-UTRでの多型125Cのみが確認され,コーディング領域には共にそれ以外の変異は認められなかった.L441Pはこれまで世界で報告のない新しい変異であり病的変異と考えられる.一方,125Cはこれまで125GorCの多型と考えられてきたが,Kozak配列の近傍で最初のMetコドンよりも8塩基上流に存在するため,125Gに比しCFTR蛋白の翻訳に何らかの障害を来す病的アリルである可能性が強く示唆される.わが国のCF患者にみられるCFTR遺伝子の変異スペクトラムは,欧米のCF患者とは明らかに様相が異なると考えられるため,各症例毎の詳細な検討が今後も必要である.
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