2001 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染金属による肺癌発症の分子機構の解明-金属によるアポトーシスの制御と発癌との関連性-
Project/Area Number |
13770311
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
櫻井 照明 東京薬科大学, 生命科学部, 助手 (30266902)
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Keywords | ヒ素 / 免疫毒性 / 発癌 / アポトーシス / 肺 / 肺胞マクロファージ / 有機ヒ素化合物 / グルタチオン |
Research Abstract |
1)各種ヒ素化合物の新しい分析定量法の開発 ヒ素化合物をin vitroでGSHと一緒に混ぜると簡単にそれぞれのGSH複合体が生成される事を利用し、薄層クロマトグラフィー上で、各種ヒ素-GSH複合体を分離し、結合しているGSHをヨウ素蒸気で検出する事でヒ素化合物の定性、定量を行う新たな簡易分析法を構築した。また、新たなヒ素プローブとして2,3-dimercapto-1-propanesulfonic acid(DMPS)を見い出した。 2)ヒ素投与後の肺におけるヒ素の蓄積 ヒ素化合物をマウスに投与し、肺におけるヒ素の蓄積とその経時変化を原子吸光法で測定した。Arsenite4.0mg/kgの単回腹腔内投与では、投与後1日目にヒ素の肺への分布が観察され、それは投与後16日目でも完全には排泄されず蓄積していた。肝臓、脾臓、腸管、胸腺、腎臓においても同様の分布、蓄積が観察された。 3)ヒ素投与の肺免疫機構に及ぼす影響 マウスにarsenite4.0mg/kgを単回腹腔内投与した所、肺胞マクロファージの数と細胞機能(リソゾーム酵素活性、窒素酸化物産生能)に変化はなかった。しかし、腹腔マクロファージ、末梢血単核球、脾臓リンパ球、胸腺細胞などでは、投与後1日目をピークとした、絶対数の減少と免疫機能の抑制が観察された。 以上、今年度は主に無機ヒ素の全身的投与(腹腔内投与)による肺免疫機能に与える影響(in vivo影響)を、他の免疫臓器に対する影響と比較検討した。その結果、この実験モデルでは肺免疫には余り影響を与えないが、脾臓や胸腺など他の免疫臓器の機能を抑制する事が明かとなった。今後は、他の投与条件による影響を、メチルヒ素化合物を投与した場合などと比較検討し、更にin vitroにおける実験を進めていく。
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