2002 Fiscal Year Annual Research Report
Notchシグナル系による表皮細胞の増殖分化の調節と異常による皮膚疾患の発生
Project/Area Number |
13770426
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奥山 隆平 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (80292332)
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Keywords | 上皮細胞 / Notch / Embryo / Caspases / 幹細胞 |
Research Abstract |
前年度の解析で、細胞表面に発現しているレセプタータンパクNotchは表皮細胞の増殖を抑制し分化を促進することが明らかとなった。一方、Notchのシグナルは神経組織はじめ多くの組織の発生過程で重要な働きを有することが知られている。そこで表皮組織が胎児期から成熟していく過程でNotchが変化するか解析をはかった。 表皮細胞の性質を in vitro で解析する上で、間葉系細胞の混在のない細胞集団を分離し培養することが肝要である。私はマウス胎生15.5日の表皮から細胞を分離し混在のない胎児表皮細胞の培養を行い、出生後の表皮細胞と性質の差異を比較した。始生15.5日の表皮は組織学的には3層からなり、基底層だけでなく中間層の細胞も一部増殖をしている一方、一部はケラチン1などの分化特異的なタンパクの発現が認められだし、出生後の表皮と異なっている。この時期の表皮細胞を取り出し解析したところ、胎児表皮細胞はNotchが高い活性を示し、そのため増殖を停止して分化をスタートしやすいことがわかった。 そこでNotchがどのような機構で細胞の分化を促進するのか明らかにするため、その下流に存在する分子を調べた。DNA arrayはNotchによってある種のcaspasesが誘導されることを示した。従来、caspasesは細胞死を誘導する分子であるが、inhibitorsを使った実験で表皮細胞で細胞死ではなく分化を誘導することがわかった。 以上の解析を通じて、胎児表皮細胞では高い活性を示すNotchによってある種のcaspasesが誘導され、青の結果増殖を停止して分化をスタートしやすいことがわかった。このことから重層扁平上皮組織では発生に伴ってNotch-caspasesの経路の活性が低下するため、分化の刺激に対して抵抗性を有するようになり、増殖を継続していけるものと思われる。
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