2001 Fiscal Year Annual Research Report
細胞増殖抑制機能を有する核内S100Cタンパク質の皮膚分化における機能解析
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13770449
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
牧野 英一 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (90314674)
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Keywords | S100C / 表皮細胞 / 増殖抑制 |
Research Abstract |
本研究にて核内S100Cによる細胞増殖抑制機構と表皮細胞の増殖・分化との関連を検討した。 第一段階として表皮細胞の増殖・分化異常を基盤として発症した種々の皮膚疾患とS100Cとの関連について検討した。有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、乳房外ページェット病、ボーエン病、メルケル細胞癌などの皮膚悪性腫瘍と尋常性乾癬、ケラトアカントーマにつき病理組織切片にてS100Cの発現パターンを観察したところ、基底細胞癌、乳房外ページェット病、ボーエン病、メルケル細胞癌では腫瘍細胞の細胞質、核内ともにS100Cの発現が著明に減弱していた。有棘細胞癌では細胞質における発現強度が標本によりさまざまであったが、核内での発現はみとめなかった。悪性黒色腫では腫瘍細胞の細胞質に、ケラトアカントーマでは核内に、尋常性乾癬では細胞質に強くS100Cの発現をみとめた。 以上の結果より、細胞増殖が盛んに行われている皮膚悪性腫瘍や尋常性乾癬ではS100Cは細胞質に局在し、自然褪縮の起こる皮膚良性腫瘍であるケラトアカントーマではS100Cが核内に局在していることがわかった。このことは細胞の増殖とS100Cの局在が密接に関連していることを示唆しているものと考えた。 第2段階としてin vitroの系における核内S100Cによる細胞増殖抑制機構を検討した。用いた細胞株は皮膚有棘細胞癌を4株、悪性黒色腫、肺小細胞癌、膵臓癌、不死化した表皮細胞、正常の表皮細胞をそれぞれ1株用いた。トリチウム・チミジンの取り込み試験、MTSアッセイにて検討したところ、いずれの細胞株においてもS100Cを強制的に核内へ移行させることによって、著明な細胞増殖抑制効果をみとめた。
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