2002 Fiscal Year Annual Research Report
細胞増殖抑制機能を有する核内S100Cタンパク質の皮膚分化における機能解析
Project/Area Number |
13770449
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
牧野 英一 岡山大学, 医学部附属病院, 助手 (90314674)
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Keywords | S100C / アポトーシス / 細胞増殖 / ペプチド / TAT / p21 |
Research Abstract |
S100Cは細胞内でCa2+と結合することによりさまざまな生体機能を発揮するS100タンパク質ファミリーの一種であり、我々はS100Cが核内に移行することにより細胞増殖を抑制すること、生体内では皮膚、とくに表皮に強く発現していることをすでに確認していた。 本研究でさらにS100Cの表皮内での発現パターンを免疫染色法にて検討したところ、細胞増殖の活発である基底層ではS100Cの核内局在はみとめられないが、増殖の停止した基底層直上から有棘層、顆粒層にかけてS100Cが核内に移行している像をみとめた。また表皮角化細胞の悪性腫瘍である皮膚有棘細胞癌の腫瘍細胞ではS100Cの核内局在が認められなかったことより表皮細胞の増殖・分化にS100Cの細胞内局在が深く関与していることが示唆された。またS100Cを人為的に核内へ導入することで腫瘍細胞の増殖を抑制できる可能性が想定された。 そこで我々は105のアミノ酸より構成されるS100Cタンパク質をその二次構造をもとに6つのペプチドに断片化して、それぞれの細胞増殖抑制効果を検討してみたところ、N末の19個のアミノ酸よりなるペプチド(pepA)に細胞増殖抑制効果を有することがわかった。TATというHIV由来のタンパク質と融合させることでpepAを人為的に細胞質内、核内へと導入してみると、細胞増殖抑制のみでなく細胞死を誘導することを見い出した。 さらにpepAにより誘導される細胞死の詳細を検討してみたところ、処理後3時間でアポトーシスのマーカーのひとつであるアネキシンVの発現がみられ、処理後20〜40時間で巨大DNA断片化がみられたことより、pepAのもつアポトーシス誘導能が証明された。さらにpepAにより誘導されたアポトーシスの分子的な機序を解析したところ、カスパーゼ非依存性、P21,P53にも非依存性であることが明らかとなった。
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