2002 Fiscal Year Annual Research Report
アトピー性皮膚炎でのバリアー異常をもたらすセラミド減少の生化学的メカニズムの解析
Project/Area Number |
13770477
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
石橋 睦子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (30318026)
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Keywords | 角質細胞間脂質 / バリアー機能 / グルコシルセラミドデアシラーゼ |
Research Abstract |
AD患者の角層におけるセラミドの減少は、セラミドのタイプ1から6の全ての種類で生じているが、なかでもアシルセラミド(AcylCer)の減少が顕著である。AcylCerはスフィンゴミエリンからではなくアシルグルコシルセラミドから生成されるため、以前に報告されたスフィンゴミエリンデアシラーゼの異常活性では、その減少の説明は不可能であった。そこで我々は、セラミド産生酵素であるβ-グルコセレブロシダーゼと競合し、セラミドの代わりにグルコシルスフィンゴシンを生成する、グルコシルセラミドデアシラーゼ(GCDase)とよぶべき酵素の異常発現を想定した。 昨年度、AD患者角層中のGCDase活性の有無を検討したところ、β-グルコセレブロシダーゼ活性とともに、グルコシルセラミドを脱アシル化し脂肪酸とGluSphに分解する酵素、GCDaseの存在が確認された。また、AD患者角層で、GluSphの定量をしたところ、GluSph量は皮疹部、無疹部ともに健常者角層に比べ有意な増加を示した。 本年度は、AD患者の表皮におけるGCDase活性の存在の有無を検討した。その結果、角層でみられたと同様、AD患者表皮の皮疹部、無疹部ともに本酵素の存在が確認された。さらに、本酵素の異常発現がAD特有か否かを検証するため、同じ炎症性疾患である慢性湿疹の角層におけるGCDase活性を検討したところ、慢性湿疹ではGCDaseの異常活性はみられなかった。 以上より、AD患者におけるAcylCerの減少機序として、GCDase活性の亢進が関与する可能性が強く示唆された。
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