2002 Fiscal Year Annual Research Report
ラット静脈洞血栓症モデルにおける脳実質内拡散のテンソル解析
Project/Area Number |
13770491
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古賀 久雄 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (80323583)
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Keywords | 磁気共鳴画像 / 拡散強調画像 / 拡散テンソル / 静脈洞血栓症 |
Research Abstract |
静脈洞血栓症は頭蓋内静脈の還流障害を生じ,脳浮腫や出血性梗塞などの原因となるが,その際の病態生理については動脈性梗塞の報告に比べてかなり少ない。ます,MR拡散テンソルの整合性を確認するべく動物実験用MR装置を用いてファントム実験を行ったところ,各物質について計算された見かけの拡散係数(ADC)が過去に報告されている値とほぼ一致した。健常ラットの脳を対象として画像データを取得し,自作した画像解析プログラムを用いて,拡散異方性を排した拡散能の指標であるtrace画像と,拡散異方性の指標であるFA画像を作成し,得られた画像およびその値が過去の報告に概ね類似することを確認した。その後Kurokawaらの方法(Neurol Med Chir 29, 175-180, 1989)に準じる静脈洞血栓症モデルの作成を試みたが,原法のままでは安定して病変を出現させることには至らなかった。硫酸バリウムによる血管造影を試みた結果,結紮不可能と思われる翼突筋静脈叢などを介して静脈洞以外の方向に流出してしまう部分が多く,ほとんど上矢状静脈洞へと流れないことを再認識した。塞栓物質や投与量を様々に変更して作成した梗塞モデルを検討したが,多くは病理学的変化を得るに至らなかった。結果的に今回の逆行性塞栓術を50匹以上に試みて,はっきりした実質内変化が生じた個体は,MR画像上海馬に片側性にT2延長が生じたものや,脳幹にT2延長が見られたもの数匹のみで,系統立ててデータを得るに至らなかった。ただしそれら数匹の個体の中には,塞栓直後よりADCが上昇する群と低下する群の両者があり,それぞれについて病理学的に検討したところ,上昇する群では細胞の膨大が少ない頃向で,動脈性梗塞に比べ血管原性浮腫がより優位となっている可能性が示唆された。異方性の変化には一定の傾向を確認できなかった。
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