2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13770564
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
佐藤 伸介 近畿大学, 医学部, 助手 (40270574)
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Keywords | オレキシン / Fos |
Research Abstract |
オレキシンは視床下部中部に限局して存在する細胞群によって作られる、多様な生理活性を示すペプチドである。特に、摂食の促進、覚醒の維持と促進、筋緊張の維持において重要であると考えられている。つまり、このペプチドの生産や、その受容体に異常がある動物においては、覚醒時間を維持できず、頻回に睡眠状態に移行する他、無動状態に突然に陥ることが観察されている。さらに、この様な睡眠・覚醒障害を主症状とするナルコレプシーの患者においては、脳セキヅイ液中のオレキシン量が低下しており、死後脳においては、オレキシン神経細胞数が明らかに減少している。 オレキシン神経細胞の活動は、糖や脂質代謝に関わる因子によって影響を受けることが明らかになっているが、細胞の活動に睡眠・覚醒と対応した日内変動があることから、睡眠・覚醒に関わる神経機構もまた、その活動の調節に関わることが予想されてきた。しかしながら、その方面からの検討は十分にはおこなわれていない。本研究は、睡眠・覚醒において重要と考えられている吻側前脳基底部の腹側線条体の活動と、オレキシン細胞の活動との関係を検討しており、実際には、吻側前脳基底部の薬理学的操作(ムシモール投与による局部的な神経活動の抑制)が、視床下部中部にある覚醒に関わるオレキシン細胞に発現するFos蛋白の量にどのような影響を与えるかを調べている。 吻側前脳基底部の腹内側部の抑制は動物に覚醒効果を起こすとともに、オレキシン細胞でのFos蛋白の発現を増加させた、さらにこの増加は、投与側に優位であった。この事実から、吻側前脳基底部の腹内側部からオレキシン細胞にいたる抑制性の投射があることが示唆された。この研究内容はEuropean Journal of Neuroscienceに2003年2月付けで受理されている。
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