2001 Fiscal Year Annual Research Report
成年後見制度における能力判定の比較法制度精神医学的研究
Project/Area Number |
13770567
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
五十嵐 禎人 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 主任研究員 (40332374)
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Keywords | 成年後見 / 民事精神鑑定 / イギリス:カナダ:フランス:ドイツ |
Research Abstract |
成年後見制度は「精神上の障害により事理を弁識する能力に障害がある」人を保護し、援助するための法制度であり、医師による本人の能力判定(精神鑑定、診断)は重要な手続の1つである。今回の成年後見制度改正の基本理念である自己決定の尊重、残存能力の活用といった新しい理念を活かした制度運用がなされるためには、医師による能力判定についても新たな方法論が必要と考えられる。本研究では、イギリス、カナダを中心にドイツ・フランスなど、わが国より先に成年後見制度の改正が行われた欧米諸国における医師による能力判定(特に財産管理能力の判定)の実際について、マニユアル・ガイドライン、聞き取り調査などによって検討した。 これら欧米諸国における医師による財産管理能力の判定は、以下の4つの要素から構成される多次元モデルが採用されていると考えられた。 1.本人の医学的・精神医学的状態:知的機能、認知機能、年齢など、医学的に判定される判断能力。わが国でいう生物学的要素にあたる部分。 2.財産管理に関する本人の思考・行動:財産管理に関する本人の思考・行動を過去・現在・未来にわたって評価する。本人の価値観、嗜好、信条、意向・希望なども考慮する。判定基準は代行決定である。 3.財産管理についての客観的な事実:本人の財産の規模・形態、財産の管理・運用の現状、財産管理のリスクについて評価する。ここでの判定基準は本人の最善の利益である。 4.社会的関係:社会の他の構成目との関係について評価する。具体的には本人の財産管理が周囲へ与える影響、搾取の危険性、援助の有無、援助を受け入れるか否かなどを評価する。 こうした、財産管理能力の多次元モデル化がノーマライゼーションの時代に相応しい新しい理念を活かした制度運用につながっていると考えられた。
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